2月16日、サンリオ株が大幅に続伸した。2025年に記録した上場来高値8,500円台から一転、直近では一時4,500円割れを窺う水準まで急落。
ピークから約50%もの企業価値が吹き飛ぶ厳しい調整局面が続いていただけに、SNSや掲示板では「ついに底打ちか?」「反転攻勢の始まりだ」といった期待の声も上がり始めている。
資産が半減するような連日の下落に耐えてきたホルダーにとっては、ようやく訪れた安息のタイミングと言えるだろう。しかし、チャートを少し引いて見てほしい。
2023年の約1,000円から2025年にかけて8,000円超まで駆け上がった「IPバブル」の動向を振り返れば、今回反発したとはいえ、現在の株価は依然として高値から大きく調整した位置にある。
「株価が上がったのはホルダーにとって嬉しいこと。でも、根本的な『高値で買ってしまった事実』は変わりません」——株式投資・トレードの講師として多くの個人投資家を指導し、自らも第一線に立つ窪田剛氏は、そう指摘する。
業績は右肩上がりなのに、なぜこれまで株価は下がり続けてきたのか。そして、今回の急騰で「もう安心だ」と言えるのか。相場が動いた今だからこそ、冷静に振り返る必要がある。
会社が順調だからこそ、株は売られた
直近の決算を見ても、サンリオの業績自体は右肩上がりだ。会社は順調に成長している。それなのに、なぜ今回反発するまで株価は下がっていたのか。
「理由はシンプルで、ここ1~2年で期待値が上がりすぎたからです。業績はずっと順調ですが、株価がそれを遥かに追い越して上昇してしまった。いわば、昨年までの上昇で『30年分の利益』を先に食べてしまっていた状態です」(窪田氏、以下同)
IPブームで世界中の資金が集まった結果、10年先はおろか、30年先までの成長分まで株価が織り込まれていた。市場が冷静さを取り戻し、「さすがに30年分はやりすぎだ」と評価を見直したのが、ここ数カ月の下落局面だった。
これまでの下落は、何かの失敗による暴落というよりも、行き過ぎた期待が剥がれ落ち、実力に見合った水準へ戻ろうとする調整だったと言える。
「株価が反発するのはよいことですが、『未来の利益を織り込みすぎている』という割高な状況が完全に解消されたわけではありません。高値で買ってしまった分を取り戻すには、通常の成長速度であれば、まだ長い時間が必要だと思いますよ」
「いい会社」でも「いい投資」とは限らない
「サンリオはいい会社だから、持ち続けていればいつか戻るはず」。そう考えたくなるが、世界の事例を見ると単純ではない。窪田氏が引き合いに出すのは、世界的優良企業であるウォルト・ディズニー(DIS)だ。
ディズニーの株価は2021年に約200ドルの高値をつけた後、5年経っても高値には戻らず、一時は半値以下に沈んだ。企業としての評価が高くても、株価が常に元の水準に戻るとは限らない。
PER(株価収益率)で比較しても差は明確だ。ディズニーのPERは約19倍だが、サンリオは今回の調整を含めても、それを上回る水準にある。
「グローバルジャイアントのディズニーよりも、今のサンリオのほうがまだ割高な水準にあります。今回株価が上がったことで、指標としては再び割高方向へ動いたわけですから」
大幅上昇のタイミングが、実は危ない理由
今回のような急騰局面は、投資家にとって心理的に“危ない日”でもある。含み損が大きく減ると、「助かった」「ここからV字回復だ」と安堵してしまうからだ。
しかし、窪田氏は「ここで思考停止になるのが一番怖い」と語る。
「含み損が少し減ると、ホッとして痛みが和らぎます。でも、ここで考えるべきなのは『機会損失』です。仮にサンリオがここから1年かけて元の株価に戻ったとしても、その間に日経平均や他の銘柄が上昇していれば、実は利益を取り逃がしている可能性があります」
100万円がようやく100万円に戻った投資家と、他銘柄で100万円を115万円にした投資家。この差は簡単には埋まらない。上がったからといって、塩漬けを正当化できるわけではない。
今のサンリオ、現金を持っていたら買いますか?
では、今回の上昇を受けて投資家はどう判断すべきか。
「資産が少し回復した今こそ、フラットに考えてみてください。『今、この瞬間に現金を持っていたとして、今の株価でサンリオを買いたいか? 』と」
もし答えが「No」なら、今回の上昇は売却して仕切り直す機会になる可能性がある。
「100万円が50万円になったとして、その50万円を100万円に戻すための最短ルートは、本当にサンリオなのか。おそらく違うはずです」
いつ利益確定するのか、どこで損切りするのか。「みんなが買っているから」「話題だから」ではなく、自分のルールで判断できるかどうか。相場の転換点こそ、投資家の真価が問われる。
今回のサンリオ株の大幅続伸は確かに朗報だ。しかし、「いい会社を適正な価格で買う」という投資の原則は変わらない。
今回上がった事実と、過去に買われすぎていた事実。この2つを冷静に天秤にかけ、感情に流されず判断すること。一時的な反発に浮かれず、長期視点を持つ姿勢こそが、今回の相場が示す最大の教訓と言えるだろう。
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
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