2月の春節は中国の民族大移動のイベントです。しかし日中関係がギクシャクする中で、今年の春節時の訪日客数は大幅減が予想されています。
中国政府による自国民の日本への渡航自粛要請から3ヵ月経過していますが、実際の影響はどうなのでしょうか?関西国際空港となんば駅を結ぶ南海電鉄の空港線の状況から探ります。

○中国人の日本への渡航自粛は春節時も継続

2月の中国の春節は一大イベントであり、帰省や旅行で中国の民族大移動が発生します。例年日本は人気の旅行先ですが、昨年の高市総理の国会での発言を契機に中国政府は自国民に日本への渡航自粛を要請中です。このため今年の春節は、国内の中国人観光客の大幅な減少が見込まれています。

中国政府の日本への渡航自粛要請は昨年11月で、それから3ヵ月が経過しました。中国人観光客の減少がインバウンド需要の痛手になる、オーバーツーリズム問題の解消が期待できる、別の国からの観光客が増加するので影響はあまりないなど、中国政府の自粛要請に対しては様々な意見が今も出ている状態です。

○外国人観光客増加のトレンドはどうなのか?南海電鉄の空港線の状況から

関西国際空港(関空)は、日本の西の玄関口として世界に知られており、インバウンドの恩恵を最も受けている場所の1つです。関空と外国人観光客に大人気の道頓堀は、南海電鉄の空港線一本で行けます(終点のなんば駅からすぐ、外国人観光客に人気の日本橋も徒歩圏内)。

南海電鉄は毎月の鉄道輸送人員数について、既設線、空港線(それぞれ定期と定期外の数字も)に分けて開示しています。定期外の空港線の輸送人員数の多くは観光客であり、同数字の変化を見ると関空から大阪に訪れる外国人観光客数をある程度把握できます。

今年度の空港線の輸送人員数(定期外)の推移は以下となっています。

・4月:1,268(前年比+16.2%)
・5月:1,304(+14.0%)
・6月:1,255(+11.0%)
・7月:1,264(+9.4%)
・8月:1,402(+15.1%)
・9月:1,245(+11.4%)
・10月:1,336(+12.6%)
・11月:1,291(+10.0%)
・12月:1,285(+1.7%)
※単位は千人

2025年11月に中国政府による日本渡航自粛要請がありましたが、要請前は前年比10%~15程度の増加で推移していました。
その後12月は1.7%増となっており、中国政府の要請の影響と見ることができます。ただし、総数で見ると12月も微増であり、大阪に来る外国人観光客の数に大きな変化は生じていないと考えられます。

○南海電鉄の業績も増収増益で好調

空港線を有する南海電鉄の業績も好調です。中国政府の渡航自粛要請の影響が今後生じる可能性もありますが、万博効果による乗客数の増加に加えて、通天閣の運営会社買収の効果もあり第3四半期まで前期比増収増益で推移しています。

百貨店などの収益は中国人観光客減の影響が既に出ていますが(南海電鉄は百貨店を持たない鉄道会社)、中国人観光客の減少=インバウンド銘柄が総崩れ、という状態には至っていません。

○もう少し様子を見る必要はあるが、インバウンド全体としてはまだ大きな影響は出ていない

購買意欲の高い中国人観光客の減少は、百貨店などの業績に既に影響を与えています。しかし南海電鉄空港線の輸送人員数の推移を見ると、海外からの訪日客自体の総数にはまだ大きな変化が生じていません。なお、1月の訪日外国人客数については、日本政府観光局から前年比4.9%減という数字が出ています。

春節のある2月は訪日客数が前年比で大きく減少する可能性が高いものの、年間を通じて見ると12月のように横ばい、もしくは若干の減少で推移する可能性も否定できません。中国政府による日本への渡航自粛要請について、どの程度の影響かの判断はまだ速いと考えられます。

中国政府の日本渡航自粛要請の影響はどの程度あるのか、春節の2月、そして今後の状況について、南海電鉄の輸送人員数の状況も見ることで、新たな視点が得られるのではないでしょうか。

石井僚一 いしいりょういち 金融・投資ライター。
大手証券グループ投資会社の勤務を経て、個人投資家・ライターに。株式市場や為替市場に関連する記事の執筆を得意としている。資産運用記事やインタビュー記事も執筆中。第一種証券外務員資格保有。 この著者の記事一覧はこちら
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