住宅ローン控除は、マイホーム購入後の家計を大きく支えてくれる制度です。しかし近年は制度の改正が続き、「昔のままの知識」でいると、思わぬ損につながることもあります。
本稿では、住宅ローン控除について、近年の制度変更や見落としがちなポイントを整理しながら、わかりやすく解説していきます。
頻繫に変更される住宅ローン控除の制度内容

住宅ローン控除は、ここ数年で頻繁に見直されています。特に重要なのが2022年の改正で、それまで「年末のローン残高の1%」だった控除率は、0.7%に引き下げられました。また、控除期間は10年間から原則13年間になり(新築等の場合)、控除対象となる所得要件は、合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下へと変更されています。

ただし、2026年の税制改正により、住宅ローン控除の内容はさらに見直されています。今回の改正では、制度の適用期限が2030年まで延長されるとともに、既存住宅(中古住宅)についても、一定の性能要件を満たした場合は、13年間の控除が受けられるようになります。

また、住宅ローン控除を受けるには、これまでは床面積が50㎡以上必要でした。それが今回の改正により、一定の条件を満たす場合、その下限が40㎡以上に緩和されます(既存住宅にも適用)。

そして、性能に優れた既存住宅を選ぶ場合は借入限度額が優遇される一方、「省エネ基準適合住宅」は2028年以降に入居する場合、原則として住宅ローン控除の対象外となります。土砂災害特別警戒区域などの「災害レッドゾーン」に建てる新築住宅も、2028年以降の入居は、同様に控除の対象外です。

計算や要件で間違いやすいポイント

制度改正に加え、住宅ローン控除は、計算方法や適用要件など、間違いやすいポイントが多いため気を付けなければなりません。

たとえば、「年末残高×0.7%」と聞くと、その金額がそのまま戻ると思いがちですが、実際はそう単純ではありません。
控除できるのは、あくまで支払っている税金(所得税と住民税の一部)の範囲内です。所得税から引ききれない場合は住民税からも控除されますが、こちらにも上限があります。税額が少ない場合は、満額控除を受けられないこともあります。

また、床面積の要件にも注意しましょう。面積要件は、マンションの販売資料やパンフレットなどに記載されている「壁芯(へきしん)面積」ではなく、登記簿上の「内法(うちのり)面積」で判断されるからです。

壁芯面積は、壁の中心線を境界として測った面積です。一方の内法面積は、壁の内側面を境界として測った面積を指します。つまり、壁芯面積では要件を満たしていても、内法面積では不足するケースがあるため、注意が必要です。
手続きやライフイベントの変化で見落としやすい注意点

住宅ローン控除は、手続きのミスにも気を付けましょう。会社員であっても、初年度は必ず確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で手続きできますが、忘れてしまった場合は自分で確定申告を行わなければなりません。

また、繰り上げ返済にも注意が必要です。
繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になると、原則として控除の対象外になります。早く返済すれば安心という考え方もありますが、税制上のメリットとのバランスを考えることが大切です。

さらに、転勤などで自宅に住まなくなり、賃貸に出した場合は原則として控除を受けられなくなります。住宅ローン控除は、「自分や家族が住み続けること」が前提の制度だからです。

そして、自宅を売った時に売却益を最大3,000万円控除できる「居住用特例」と住宅ローン控除は、時期が近いと併用できないといった制限があります。ライフイベントの変化が、こうした税制に影響する点も忘れないようにしましょう。
住宅ローン控除は制度改正や要件に気を付けたい

住宅ローン控除は家計にとって心強い制度ですが、制度改正や細かな要件を正しく理解していなければ、本来受けられるはずの控除を逃してしまうこともあります。購入前のタイミングで一度、制度を整理して確認しておくことが大切です。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら
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