前編では、プロが考える「完成度の高いスーツ」の条件として、肩や襟まわりに表れる“立体感”が重要だと教わった。では、その立体感を自分のライフスタイルや予算に合わせて形にするには、何を選べばいいのか。
後編では、UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE'Sで人気の生地(イギリス/イタリア/日本/中国)の特徴と価格帯、モデルの違い、オーダー当日の進め方までを松田翼氏に聞いた。
○【生地】イタリア・イギリス・日本・中国の違い

まずは、よく売れている生地の種類とその特徴についても解説してもらった。「私たちが在庫を持っている生地は常時1,500種類ほどあります。」と松田氏。

「イギリスの生地はハリ・コシがあり、湿気に強く、ヘビーローテーションで着回してもクタクタになりづらい。言ってみればデニムのように、着続けて”育てていく”感覚に近いですね」

「人気があるのはイタリアの生地です。艶があり、滑らかで柔らかいので着やすいのが特徴です。ただ糸が細いので、イギリスの生地と比較すると取り扱いはデリケートになります。湿気に弱いので、秋冬をメインに着用したいお客様にはオススメです。」

日本の生地は、イギリスの生地と似ていてしっかりとした作り。1週間に2回は着たい、けれどイギリスの生地ほどの予算は出せない、という人に向いている。中国の生地はイタリアの生地に似ているが、発色は本場に敵わない。その理由については「使っている水が硬いから、と言われています」と松田氏。大量生産により、リーズナブルな価格で提供されている。


同店におけるオーダースーツのボリュームゾーンは7万円~。これは、イタリアの生地のエントリー価格が7万円~だから、という理由にほかならない。日本の生地を選べば6万円~、中国の生地を選べば5万円~でオーダースーツ1着を仕立てられる。
○【モデル】ナポリ、ミラノ、ブリティッシュ、フィレンツェの違い

「スーツのモデル」については、ナポリ、ミラノ、ブリティッシュ、フィレンツェを用意している。

「シャツのように軽く羽織る芸術品とされるナポリ、都会的でモダンなミラノ、スーツ発祥の地で構築的で威厳を持たせるブリティッシュ、とスタイルが異なります。弊社ではナポリスタイルが主流です。」

「新モデルとしてリリースしたフィレンツェもおすすめしています。脇下のパーツのことを細腹(さいばら)と呼ぶんですが、ここのパーツを少なくしてストライプやチェックの柄が歪まないように仕立てるのがフィレンツェの特徴です。最近はSNSを見た若者を中心に、この本格的な仕立てが注目を集めています。この価格帯のパターンオーダーでフィレンツェに対応しているメーカーがなかったので、それならば青山商事で提案してみよう、ということで昨秋から取り組んでいます。見る人が見れば分かる、周囲と差がつく部分だと思います」。

オーダースーツ作成のために必要な時間は、1時間半~2時間ほど。どんなスーツを作りたいのか担当者と相談し、生地を選び、採寸して、オプションも決めていく。
ちなみに選べるオプションは40種類以上。ボタンひとつとっても、本水牛(水牛の角)、ナットボタン(ヤシの実)をはじめ、選択肢は豊富に用意されている。繁忙期には注文してから1か月で、夏季シーズンであれば3週間くらいで仕上がる見込みだ(納期を早めるオプションも用意している)。

○スーツに合わせて、新しいネクタイを

「これは余談ですが、新規でスーツを作るお客様には、あわせてネクタイもご提案しています。せっかくの新調したスーツが周りに気付いてもらえない、というのはよくあるケースです。でもネクタイを新しくすると、真新しいスーツにも気付いてもらえます。ネイビーやグレーなど、同系色のスーツを買い足すお客様も多いので、これは必ず伝えるようにしています」

初めてのオーダースーツは、誰しもが不安に思うもの。ここで松田氏は「自分の理想を100%、叶えようとすると失敗しがちです」とアドバイスする。「抽象的な、こういう雰囲気でというイメージは持ちつつも余白を残し、あとは担当者と相談しながら決めていったほうが、結果的には後悔のないスーツが作れると思います。店頭で、思わぬ提案、発見を楽しんでもらえたらと思います」。決め打ちで来店すると視野も狭くなり、あとで「こんな選択肢もあったのか」と気付かされる。担当者とのヒアリングを楽しみに来店する、くらいの心構えの方が、案外上手くいくのかも知れない。
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