新年度入りを前に、2026年1~3月の為替市場を振り返ります。米国経済指標、日本銀行の金融政策、そして中東情勢――。
※本稿は、3月9日時点の市場環境を前提にまとめています。
○1月:米経済指標と日銀会合が相場材料に
年明けの1月は、米国の雇用統計など主要経済指標が相場の焦点となりました。1月9日に発表された12月の米雇用統計は市場予想を上回り、ドル買いが優勢に。ドル円は1月14日に159円半ばまで上昇しました。
その後も米PPIなどインフレ関連指標が底堅い内容となり、ドル円は強含みで推移。1月23日の日銀金融政策決定会合の後には再び159円台を付けました。こうした動きの背景には、米国の金利高観測と日銀の金融政策の行方を巡る思惑がありました。
しかしその後、ニューヨーク連銀によるレートチェックが確認されると協調介入への警戒感が急速に強まり、ドル円は152円台まで急落。神経質な値動きが続きました。
○2月:衆院選と中東情勢で市場は不安定化
2月8日の衆議院選挙では、与党・自民党が316議席を獲得し、単独で3分の2を超える大勝となりました。選挙前は高市首相の財政拡張策を受け財政悪化への懸念から日本の長期金利が上昇し、円安が進行。
しかしその後は、1月に実施されたレートチェックが米財務省主導だったとの観測が報じられ、円の買い戻しが進行。ドル円は2月12日に152円台まで下落しました。もっとも、その後は高市首相と植田日銀総裁の会談で追加利上げに慎重な姿勢が示されたとの報道を受け、再び円安方向へ振れる展開となりました。
こうした中、2月28日には米国とイスラエルがイランに対する共同攻撃を開始し、中東情勢は一気に緊迫しました。最高指導者ハメネイ師の死亡が伝えられるなど、事態は重大局面を迎えました。ホルムズ海峡の事実上の閉鎖を受け、WTI原油先物は一時75ドル台まで上昇しました。
株式市場は下落し、安全資産とされる金が買われるなど、典型的なリスクオフの動きが広がりました。一方、為替市場では原油高による日本の交易条件悪化が意識され、円安が進行。ドル円は再び上昇し、介入警戒感が意識される展開となりました。
○3月:中国全人代と金融政策が市場の焦点に
3月5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)では、2026年のGDP成長率目標が示されました。目標水準は「4.5~5%」に引き下げとなり、市場予想の範囲内ながら、成長鈍化への警戒感をにじませる内容となりました。
一方、日本国内では金融政策への関心も高まっています。日銀副総裁は3月2日の講演で早期追加利上げの可能性を示唆。中東情勢の緊迫によるエネルギー価格の高騰などを背景に日本経済の減速も懸念されますが、5日には「日銀は4月利上げの可能性も排除せず」と報じられ、市場では、少なくとも年内の追加利上げが織り込まれ始めています。
一方、米2月ISM製造業景況指数は上回り前月比ほぼ横這い、同非製造業景況指数は前月比大幅上昇と米経済の堅調を裏付けましたが、当面は米国景気の動向に加え、中東情勢などの地政学要因が為替相場を左右する展開が続いています。
○2026年1~3月の総括
年初からの為替市場では、「地政学リスク」と「金融政策」の綱引きが鮮明でした。特に中東情勢の緊迫化は、株安・原油高といった典型的なリスクオフの動きを通じて市場全体に大きな影響を及ぼしました。
為替市場では、原油高による日本の交易条件悪化も意識され、円安圧力が続きました。ドル円は150円台後半を中心に神経質な値動きとなり、当局による為替介入への警戒感も相場の重しとなりました。
日本のGDP見通しは上方修正されたものの、実体経済は円安による輸入インフレと消費低迷の狭間で苦しんでいます。日銀見通しでは、2026年度のコアCPIは1.9%と2%目標に近づく想定ですが、原油高が続けば上振れリスクがあります。
その結果、スタグフレーション懸念も浮上しています。
○地政学リスク
イラン情勢が長期化し、ホルムズ海峡の混乱が続けば原油価格が130ドルを超える可能性も指摘されています。その場合、日本のGDP成長率は大きく押し下げられ、インフレ率は急上昇する可能性があります。
また、3月末から4月初旬に予定される米中首脳会談も重要です。イラン情勢が中国のエネルギー供給に影響を与えれば、交渉が難航し、米中摩擦再燃がドル円の変動要因となる可能性があります。
○金融政策
日銀は物価目標達成に向け、段階的に中立金利水準へ近づける姿勢を示しています。一方、米国では中東情勢によるインフレ圧力を背景に、FRBの利下げ観測が後退しています。
欧州ではエネルギー供給不安がユーロ相場に影響する可能性があります。ドル円相場については150~160円レンジを想定する見方が多いものの、中東情勢の悪化や原油高が続けば、160円台を試す展開も否定できません。介入警戒も引き続き必要です。
○国内要因
4月の春闘結果も重要です。
○まとめ
2026年前半の為替市場は、地政学リスクと金融政策が交錯する不安定な展開となりました。後半に向けては、中東情勢の安定化、米中関係の行方、そして日銀の利上げペースが大きな鍵を握ります。
不確実性が高い環境下では、為替変動リスクを前提とした柔軟なヘッジ戦略がこれまで以上に重要になるでしょう。
今後の為替市場は、中東情勢の行方と日米金融政策の動向が引き続き大きな焦点となりそうです。
藤田行生 SBI FXトレード株式会社 代表取締役社長。神奈川県相模原市出身、中央大学経済学部卒業。改正外為法施行後の1999年から国内黎明期のFX事業において主に外国為替ディーラーとして従事。2008年5月SBIグループでの本格的なFX事業立ち上げのため、SBIリクイディティ・マーケット(株)の設立に尽力。為替ディーリングやシステムなどの責任者を務め、2020年6月SBIリクイディティ・マーケット(株)取締役副社長に就任。その後SBIグループのFX専業会社である、SBI FXトレード(株)代表取締役社長に就任し、現在に至る。 この著者の記事一覧はこちら
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