中東情勢の緊迫化を受け、株式市場は神経質な値動きを続けている。とりわけイランを巡る軍事衝突やホルムズ海峡封鎖のニュースは、「第3次オイルショック」への懸念とともに市場の不安を強めた。


こうした状況のなか、投資家のあいだでは「急落はむしろ買い場」と相場の歪みを狙う動きも出ている。一方で、事態をマクロな視点から俯瞰するのが、YouTubeチャンネル登録者40万人を誇るFP・鳥海翔氏だ。
○「世界の秩序を保つため」は、アメリカの“建前”だった

なぜアメリカは2月というタイミングで、軍事行動のリスクを冒してまでイラン侵攻という決断を下したのか。「世界の平和を守るため」という表向きの理由だけでは説明がつかない。鳥海氏は、アメリカの行動の裏にある生々しい動機を解説する。

「アメリカがここまでしてイランを攻める理由は、彼らが今の世界の仕組みで一番得をしており、その“覇権を脅かされること”を何よりも恐れているからです。世界の貿易はドルを中心に回り、原油もドルで売買され、結果として世界のお金がアメリカに集まります」

もしアメリカがイランを止められず、イランが核兵器を保有する事態になればどうなるのか。鳥海氏は、「アメリカの安全保障に依存している中東の周辺国やヨーロッパのNATO諸国、日本などが、『いざという時に本当にアメリカは守ってくれるのか』と疑問を抱く可能性がある」と指摘する。

「『アメリカの言うことは絶対ではない』とわかれば、独自の軍拡に走ったり、別の国と組んだりする動きが出てくる。そうなると『ドルだけに預けるのは危ない』という思惑により、お金がアメリカに集まらなくなってきます。アメリカが動いたのは正義のためではなく、自国の絶対的な利益を守るためなのです」(鳥海氏)

○「有事の金」が正しくない相場とは?

戦争や地政学リスクが高まると、原油だけでなく「金(ゴールド)」に資金が向かいやすい。だが、ここでも表面的な動きに飛びつくのは早計だ。
鳥海氏は、今後の株価の行方を決める具体的な仕組みについてこう語る。

「今後の株価は『原油がどこまで上がるか』と『戦争が拡大するか』でほぼ決まります。原油が80ドル前後で止まるなら株は一時的に下がっても戻りますが、原油価格は一時110ドル近くまで急騰しました。今後の株価を見るうえで重要なのは、この原油価格がどの水準で定着するかです。80ドル前後まで落ち着けば株は一時的に下がっても持ち直す展開が考えられます。」

「仮に90~100ドルの水準が続けばインフレ圧力が強まり、利下げが遠のき株式市場には逆風となるでしょう。そしてもし100ドルを明確に超える状態が続けば、インフレ再燃の可能性が高まり、企業コストの上昇によってEPSそのものが削られ、株式市場への影響はより大きくなるのです。基本的に、株価は『EPS(企業の稼ぐ力)』×『PER(投資家の期待や感情)』という掛け算で決まります」

戦争という不確実性だけでPERが下がって一時的に株価が落ちることはあるが、原油価格がさほど動かず企業の実害がなければ、不安が消えたあとにPERはいずれ戻るという。

対して、原油が高騰しインフレを引き起こせば、コスト増によってEPS(企業の稼ぐ力)そのものが削られてしまう。それが、鳥海氏の見解だ。

「また、不透明な状況下ではゴールドが値上がりしやすいですが、投機的に買うのはおすすめしません。ゴールドの最大の敵は『金利』です。実質金利が急上昇したり、恐怖が消えてリスクオン相場になったり、ドルが急騰したりすると、金は大きく崩れる歴史的パターンがあります」(鳥海氏)

○パニックな情勢だからこそ、投資をやめてはいけない

有事の際、メディアの報道はセンセーショナルになりやすい傾向にあるが、過去の歴史を振り返ると意外な事実が見えてくる。


1990年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争など、戦争単体で長期の弱気相場に直結した例は多くない。株価が長期で下落するのは、戦争に大幅な利上げやインフレが組み合わさった時だけだ。

「市場がいちばん嫌うのは不確実性です。不確実性が減れば株は戻ります。ではどうしたらよいのかと言うと、とにかく狼狽しない・慌てないことです。いままでやってきたことを淡々と継続する。至ってシンプルですが、それが長期投資をするということです」(鳥海氏)

歴史的なホルムズ海峡封鎖というニュースのインパクトは大きい。しかし、もっとも避けるべきは短期的なパニックに巻き込まれることだ。

不確実な情勢下においてこそ、自らの投資の軸を保つことが求められている。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。
現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
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