本サイトの新年恒例企画、昨年はこれを買ったという話で、僕はキヤノン「EOS R5 Mark II」を取り上げた。購入時点で発売から1年以上経っている製品だが、使ってみると「あ、あ、新しい……」と感心させられることばかり。
40万円を切る実売価格に惚れて購入
僕がそれまで仕事で使っていたのは、ソニーの「α7R IV」と「α7R III」。それぞれ2019年9月と2017年11月発売の旧モデルだ。2022年11月には、Rシリーズの現行モデル「α7R V」が発売されているが、α7R IVと画素数は変わらないしなぁ…とパス。新しいカメラのほうが使いやすいのは間違いないが、そのコストをクライアントは負担してくれないし、写りが向上しても己の評価やギャランティーには決して結びつかない。実際に同業諸氏をみると、ソニーであれば10年選手のα7 IIやα7R IIとか、キヤノンやニコンの一眼レフがまだ現役バリバリ。一部改良をしながらα7R Vと併売されているα7R IVなど、退役するにはまだ早すぎるのだ。というわけで、昨年はセンサー交換まで含めたフルオーバーホールもしたのだが。
ただ、新しいカメラで自分自身が楽になるメリットは、EOS R5 Mark IIを仕事に投入してつくづく感じた。そこにソニーがα7 Vを発表したというわけだ。僕も、発表前からネットの噂は気にしていたが、価格は50万円くらいを予想していた。
そんなわけで発売日に入手したα7 Vは、すぐさま仕事の主力機に。レンズをあれこれ使う現場なら、サブにはα7R IV、標準ズームだけでよければEOS R5 Mark IIと2セットを持っていき、どちらを使うか現場で(主に気分で)判断するという日々が続いている。高解像度モデルからベーシックモデルというのはダウングレードに思われがちだが、ウェブの仕事では1000万画素あれば足りることが多く、印刷媒体でもA4見開き(=A3)であれば2000万画素でお釣りがくる。もちろん、ポスターなどはα7R IVの約6100万画素が威力を発揮するが、約3300万画素のα7 Vでも仕事には十分すぎるのだ。
α7 Vの特徴といえば、その約3300万画素センサーだ。画素数こそ前型のα7 IVと変わらないが、裏面照射型から部分積層型に進化。プロセッサーも上位機種にあるAIプロセッシングユニットを統合した新型・BIONZ XR2にバージョンアップしている。ダイナミックレンジ(階調幅)はメカシャッターで16ストップ。
ただし、ローパスフィルターレスで解像感の高いRシリーズを長らく使ってきたため、拡大するとちょっとキレ味が物足りない気もする。このあたりはレタッチで改善できる部分かもしれないが、RAW記録方式が「ロスレス圧縮」「圧縮(画質優先)」「圧縮」と非圧縮のない3種類に変わり、デフォルトの「圧縮(画質優先)」が執筆時点でまだ純正RAWソフトにしか対応していない(Adobe Lightroomは「ロスレス圧縮」のみ対応)。今後の対応状況次第ではあるが、RAW現像をする人は「ロスレス圧縮」で撮影しよう。
電子シャッターだとわずかに歪みが出る
デフォルトは依然としてメカシャッターであるものの、部分積層型になって電子シャッターがより実用的になったのもトピックだ。センサーの読み出し速度はα7 IVの約4.5倍にアップ。これ速ければ速いほど、画面の両端(通常は上下)で生じる露光・読み出しのタイムラグが減り、動くものを撮影した際にかたちが歪む(ローリング歪み)のを防ぐ。全画素を同時に露光・読み出しするグローバルシャッターのα9 IIIは別格として、積層型センサーのα1 IIにどこまで肉薄できるかが興味深かったので、正月早々に箱根駅伝のランナーを沿道から撮影してみた。
ゴール直前の最後のカーブを、反対側から600mmで撮影。選手のスピードは時速20kmくらいで、電子シャッターでもイケるかなと思ったが、背後がわずかだが歪んでしまった。
なお、好きなボタンに割り当てられる機能として「押す間連写速度ブースト」というものがある。文字通り、割り当てたボタンを押している間は連写速度が速まるというもの。速度も秒間30コマ・20コマ・15コマ・10コマ・5コマから選ぶことができ、僕はファインダー右横のC1ボタンに30コマを割り当てている。望遠レンズを多用する人なら、レンズのフォーカスホールドボタンに割り当てるのもよさそうだ。
ソニーがアピールしている進化ポイントとしては、ディープラーニングによりAWB(オートホワイトバランス)がより正確になったという。RAW現像をすることが多い僕はあまり気にしていなかったが、たしかにαシリーズはAWBがよくないという声も聞く。
AFもいろいろと賢くなり、被写体認識AFは人物、動物/鳥、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機の8項目に加え、それらを自動判別するオートも用意されている。ただし、いろいろなものを検知しすぎて、結局はオフが使いやすいのかなぁという気がしている。たとえば、先に紹介した箱根駅伝のケースでは、ランナーではなく背後で応援している人たちの顔を拾ってしまう。全般的にコントラストが強いものや、手前を横切るものに引っ張られやすい感はあるが、そのあたりは設定で追い込んでいくべきなのだろう。
充実といえば、絵作りを司る「クリエティブルック」の話も。2020年10月発売のα7S IIIから搭載されているもので、僕自身はお初になる。α7R IVでは、前身の「クリエイティブスタイル」が搭載されていたのだが、これがデフォルトのスタンダード以外ではおかしな仕上がりになりがちで、いじるという発想がなかった。しかし「クリエティブルック」は各項目とも高いレベルの仕上がり。
さらに、従来からのFL(フィルム)に加えて、25年8月に発売されたRX1R IIIとFX2に搭載されたFL2とFL3がαシリーズでは初めて搭載された。FLは落ち着いた発色ながらコントラストは高め。赤・青・緑が印象的な仕上がりになる。それに対してFL2はさらに発色を抑え、コントラストを高めている。富士フイルム製品で僕が常用しているフィルムシミュレーション「クラシッククローム」に似ている。FL3は反対にコントラストを抑えてクリア。同じくフィルムシミュレーションの「クラシックネガ」に近い。
操作面では、液晶がα7 IVのバリアングル式から、α7R V以降の機種に採用されている4軸のマルチアングル式に。僕はシンプルなチルト式が好きで、イコール手数が増えるし、画面が光軸からずれるバリアングル式は好きではないのだが、そうした多種多様な好みや用途に対応できるマルチアングル式は素直に評価したい。それから、すでにα7 IVでも採用されていた機能だが、電源オフ時にシャッターを閉じることができる。レンズ交換でブロワーでは取れないゴミが付着するのは、ミラーレス機の宿命だった。それが完全ではないが、ある程度防げるのはありがたい。また液晶そのものも3.2型210万ドットと、α7 IVの3型104万ドットから大きくスペックアップしている。
ファインダーはα7 IVと同じ0.5型・368万ピクセルのOLED。ただし、アイポイントが約18.5mmから約23mmと長くなり、メガネをしていても見やすい。576万ドットのα7R IVと比べても、見え具合が劣る印象はない。「表示画質」はデフォルトでは「標準」になっているが、もうひとつの選択肢「高画質」を選ぶと、ほんのわずかに精細感がアップ。そのぶん電池を食うらしいが、そもそもバッテリーの持ちがよいので、しばらく「高画質」で使おうと思う。
使ってみると改善してほしい点もいろいろ発見
「フリッカーレス撮影」が出たついでにいえば、ソニーの人たちにしつこく主張しても改善してくれないのがフリッカーの警告。説明すると、フリッカーとは蛍光灯など人工光源の、肉眼では分からない点滅。カメラのシャッターと点滅の周期がずれると明るさにムラが生じたり、画面にボーダー柄のような横縞が現れる。したがって、フリッカーの警告が表示されたら、ムラや横縞を防ぐ「フリッカーレス撮影」をオンにすればよいのだが、αシリーズはそもそもオンにしないと警告が表示されない。室内撮影では、まずオンにしてフリッカーの有無を調べ、警告が出なければオフに戻すという手順が必要になる。フリッカーが出ない場所でオンにしても問題はないし、α7 Vはオンオフで性能的な違いはほとんどない(と思う)。だから常時オンでもいいのだが、キヤノンは低減のオンオフ関係なく警告が表示されるので、ソニーだってやろうと思えばできるはず。善処していただきたい。
もうひとつ善処をお願いしたいのが、デフォルトではオートになっている「Dレンジオプティマイザ」。つぶれそうな暗部を持ち上げてくれる機能だが、暗部を影として生かしたいときに苦労する。大幅にマイナス補正をしても暗部がなかなかつぶれてくれず、これは他メーカーからソニーに乗り換えた人が戸惑うポイントかと思う。「Dレンジオプティマイザ」は5段階のマニュアルに加えてオフも選択できるが、マイナス補正に比例して効果が弱まるモードがあるとありがたい。ぜひご検討ください。
ほかにもいろいろ紹介したいことはあるし、今回は触れていないが動画機能も高いスペックを誇る。円安もあってカメラが高いといわれる昨今だが、むしろこの機能で40万円を切る価格設定にはソニーの意欲も感じる。ソニー純正はもとより、シグマやタムロンをはじめ豊富なレンズが用意され、あらゆるジャンルでその力を発揮する一台だと思う。
鹿野貴司 しかのたかし 1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。著書『いい写真を取る100の方法』が玄光社から発売中。2025年1月10日~23日には、東京・銀座のソニーイメージングギャラリーで写真展「この雨が地維より湧くとき」を開催。 この著者の記事一覧はこちら











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