日本最大級のヴィンテージイベント「VCM VINTAGE MARKET Vol.8」が、2026年3月28、29日に開催された。全国から人気ショップが集結し、毎回1万人以上の来場者で賑わう一大イベントだ。


主催は、ヴィンテージ総合プラットフォーム「VCM」を運営する株式会社VCMの代表取締役・十倍直昭さん。デニムやジュエリーなど価格高騰が続く中、ヴィンテージ市場ではいま何が起きているのか。ブームにとどまらない市場の実態と、“本物”の価値について十倍さんに話を聞いた。

高騰する市場、ヴィンテージTシャツの現在地は?

――ここ数年、ヴィンテージの価格高騰が著しいようですが、現場ではどのように感じていますか?

コロナ禍をきっかけに、ヴィンテージ市場の価格は大きく変化しました。10年前の感覚とは比較にならないほど、全体的に上がっています。これは国内に限った現象ではなく、世界規模で起きている動きです。

もともと90年代にヴィンテージの価値を見出し、文化として定着させたのは日本が一つの起点ですが、現在ではそれが世界中に広がり、ある種の“共通言語”のようなものになってきていると感じます。

ヴィンテージアイテムは減ることはあっても増えることはないため、こうした背景の中で価値が見直され続けているのは、自然な流れとも言えるのではないでしょうか。

――ちなみに、ヴィンテージTシャツでは最近、どのようなジャンルに注目が集まっているのですか?

ニルヴァーナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズなどのバンドTシャツがきっかけとなりましたが、現在は少しトレンドに変化が見られます。

派手なグラフィックのバンドTシャツが一巡し、よりアートTやフォトTといった、洗練されたデザインを求める方も新たに増えている印象です。

例えば、ブルース・ウェーバーのような写真家が手掛けたフォトTや、エッシャー、ダリといった芸術家のアートTなどは、日常のファッションにも馴染みやすく、人気も高まっています。

「投資目線」の風潮には疑問も

――最近では投資目的でヴィンテージを買う層も増えていると聞きますが、それについてはどのように感じていますか?

「ヴィンテージアイテムが投資になる」といった話が出てきているのは事実ですが、「投資だけ」を目的にヴィンテージを買っている人は、実際にはそれほど多くない印象です。


むしろ、本当にヴィンテージが好きで突き詰めている人ほど、結果的に価値が下がりにくいものを手にしている、というのが実態に近いのではないでしょうか。

そもそも、Tシャツだけが高騰しているわけではありません。ヴィンテージ市場全体が上がっている中で、特にデニムやエルメスのジュエリー、ロレックスなどは、より顕著に価格が上がっています。

そうした文脈で見ると、ヴィンテージTシャツの価格も、決して特別なものではないと捉えています。

――なるほど!

ヴィンテージを投資目的だけで買う、という考え方もありますが、あまり本質的ではないかもしれません。

ヴィンテージは、その背景にあるカルチャーを理解してこそ、本当の価値が見えてくるものだと思います。音楽や映画、芸術や歴史的背景といった文脈の中で捉えることで、その価値に自然と気づける。だからこそ、結果的に適正な価格で選ぶことができ、長く持っていても資産性があると言えるのではないでしょうか。

好きで選んだものが、結果として価値が下がらず、手放す時も価格が落ちていない。そんな体験はやっぱり嬉しいものですよね。

愛着を持って身につけながら、同時に資産としての価値も持っている。それがヴィンテージの魅力だと思います。
単に「価格が上がるかどうか」だけで選ぶよりも、その背景にあるストーリーやカルチャーに惹かれて選ぶほうが、結果的にも満足度は高いのではないでしょうか。

――「着て楽しむ」というポリシーを皆さん大事にしているんですね!
近年のトレンド「ブランドアーカイブ」とは?

――ちなみに、今のヴィンテージ市場全体を通してトレンドのようなものはありますか?

「ブランドアーカイブ」というジャンルも近年ヴィンテージ業界で、より注目を集めています。例えば、90年代のマルタン・マルジェラのレアなパンツが約200万円、デニムジャケットが約150万円といったように、市場価格も大きく上がっています。

興味深いのは、これらが従来のヴィンテージとは少し異なる文脈で評価されている点です。まだ歴史としては新しいものの、ブランドの思想や背景を含めて評価される“アーカイブピース”として、新たな価値が生まれ始めています。

同様に、ISSEY MIYAKEやYohji Yamamoto、COMME des GARÇONSといったブランドのアイテムにも、アーカイブとしての評価がつき始めています。

面白いのは、オールドGAPやオールドユニクロのように、当時は数千円で販売されていたものにも価値が付き始めている点です。

今の服作りは、過去のデザインの積み重ねや再解釈によって成り立っている部分も多く、そうした流れの中でヴィンテージが改めて参照されているように感じます。

そのため、オリジナルそのものに価値を見出し、原点へと立ち返る動きが生まれているのかもしれません。

――今後のヴィンテージ市場はどのように成長していくでしょうか?

今後もヴィンテージ市場は拡大していくと考えています。

世界的に市場規模が大きくなるという見方もありますし、日本のリユースショップがアメリカで支持を伸ばしているなど、実際の動きとしてもその傾向は見られます。

大きく捉えると、ヴィンテージはリユース市場の一部です。
近年では「新しいものを作り続ける」ことに対する価値観も変化し、リユースというサステナブルな選択肢が広く受け入れられるようになってきました。

そうした時代背景に加えて、ファッションとしての魅力も兼ね備えている古着は、今後も需要が高まっていくのではないかと感じています。
初心者も見るだけで楽しい、VCM VINTAGE MARKETが古着を楽しむ第一歩に

――知らないことばかりで面白かったです! 先日開催した「VCM VINTAGE MARKET」は2日間にわたって大盛況でしたね!

「VCM VINTAGE MARKET」には、全国から約150のショップが集まります。

ヴィンテージショップは、初めての方にとって少しハードルが高く感じられることもあるかもしれません。「知識がないと入りづらい」と思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、このイベントでは1,000円程度のものから数百万円のものまでが同じ空間に並び、店主と直接会話をしながら、その背景やストーリーを知ることができます。

無理に購入する必要はありません。本物のピースを実際に見て、触れて、知ること自体に価値があると考えています。

男女問わず、カップルやご家族でも、気軽にヴィンテージの魅力を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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