吉岡里帆、女優。京都府京都市出身。
メディアの調査・分析を行うニホンモニター株式会社が、2025年1月~11月のCM出稿状況を基にした『2025タレントCM起用社数ランキング』によると9社のテレビCMに出演している。出演しているCMは衣食住をコンプリートしており、我々の生活に身近すぎる女優だ。お茶の間の人間の99.99999……%は彼女を「かわいらしい女性」だと思うだろう。かわいらしさは彼女の強い武器である反面、それだけが彼女の魅力ではない。
ライターの清見真緒が愛と気合いを込めて、1人の人物、1つの作品をたっぷりとつづるお試し企画【気になるあの人、あの作品(仮)】。第1回は、テレビCMでの“受動吉岡里帆”から一歩奥地に踏み込んだ先の吉岡里帆について紹介していく。
○『カルテット』|吉岡里帆の存在が世間に広まった一作
テレビCMで見せる明るく元気な吉岡里帆と、ドラマや映画で見せる吉岡里帆の「違う顔」に最初に気づかせてくれた作品が、2017年に放送されたドラマ『カルテット』(TBS系)だった。
主人公たちが組む弦楽四重奏「カルテットドーナツホール」のメンバーを翻弄して輪を乱す、ありすちゃんとして、爪痕を残した吉岡里帆。元地下アイドルで目の奥は笑っていないありすちゃん。吉岡里帆の顔立ちが整っているからこそ、目の奥が笑っていなくても真顔でも怖い顔をしていても、悪どいことをしていても憎めないキャラクターとなった。
様々な欲望を抱えたありすちゃんは、出てくるたびにSNSで話題になり、「大好き大好き大好き……殺したい!」のセリフはドラマ放送直後からインターネット上で見かけるように。
○『ハケンアニメ!』|嫌味にならない「真面目・熱血」
一歩間違えればウザったい説教女や熱血で空回り女になってしまう、真面目を基本性能としたキャラクター。吉岡里帆の手にかかれば「真面目なキャラクター」は嫌味なく、その魅力を存分に引き出されることになる。
吉岡里帆が演じた中で、真面目かつ、熱血要素もあるキャラクターといえば、辻村深月氏の同名小説を原作とした映画『ハケンアニメ!』(22)の斎藤瞳だ。
「ハケン」と聞くと「派遣」を連想する人も多いだろうが、ここでの『ハケン』は『覇権』である。同クール内で制作されたアニメの中で数々の「一番」を取ったアニメを指す言葉だ。「そのクールの中で覇権を握るアニメ」を作ろうと働く、アニメ制作現場を舞台にした物語が『ハケンアニメ』なのだ。
優れたライバルとの戦い、挑戦、失敗、気付き、仲間を得て、大成功(実質)を収める「夢・目標に向かってひたすらにがんばる真面目でいい子な主人公」が吉岡里帆演じる斎藤瞳だった。
一歩間違えれば正論委員長、自我なく流されるいい子で終わってしまいそうな役柄であるところを、作品への熱量の高さ、嫌味なく、憎めない役にした。「こういう人のためなら頑張って仕事ができるだろうな」と思わせる声や話し方など、全てがハマりにハマっていた作品。
○『正体』|現実にありそうでなさそうな事件を「あるのでは」に寄せる好演
日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を受賞した映画『正体』(24)での安藤沙耶香役もハマり役だった。ヒロインポジションではあるものの、ヒロインという肩書きが正しいのか一度立ち止まる必要がある。
いや、吉岡里帆が主人公のために動いた動機を考えると「愛」ではあるんだけれど、それが本当に恋愛だったのかを考え始めると日が暮れそうだ。恋愛関係ではあったものの、恋愛関係を超える無償の信頼からの強い行動があった。
主人公を怪しいと思いながら、でも愛のような感情が芽生え、疑いながらも関係を続けてしまう……。恋なのか愛なのか、日常にはない刺激からなのか、興味本位なのか。本人も気づかないような絶妙な感情の移り変わりを演じる力と、そこにいるだけで「この物語は自分の周りでも起こるかも」と思わせる存在感が光りすぎていた一作。
○『アイスクリームフィーバー』|吉岡里帆だからこそ演じることができた世界観
川上未映子氏が原案の映画『アイスクリームフィーバー』。公開された2023年前後を皮切りに、女性同士の恋愛をテーマにした作品や、同性を愛するキャラクターが少しずつ増えたように感じるが、当時は「あの吉岡里帆がこの役柄を演じるのか!?」と驚いたことを覚えている。
アイスクリーム屋に偶然立ち寄った女性に一目惚れのような感覚を覚え、次の来店を期待してメイクが濃くなっていたり、できもしないことをできると言って会うきっかけを作ろうとしたり。同性だからと言って禁断の愛でもなんでもなく、ただ個人的な出会いがあり、関係が進み、終わる、どこにでもある話。
どこにでもある話がアーティスティックに描かれていて、冒頭で「これは映画ではない」と宣言があった通り、とにかくキレイな映像を観ているような雰囲気。そして、見てはいけないものを見ているような感覚を味わえる。この世界観を表現するには吉岡里帆しかいないでしょう、と思える映画だった。
○『UR LIFESTYLE COLLEGE』|日曜日の癒しの時間
最後に映像作品ではないが、吉岡里帆がパーソナリティを務めるラジオ番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(J-WAVE 毎週日曜18:00~18:54)を紹介したい。
心地よい音楽に心地よい声。腹を抱えて笑う番組ではないが、それがちょうどよい。日曜日の夕方という落ち着いて過ごしたい時間帯に、吉岡里帆の少し低めの落ち着いた声、話し方。それを聞いていると、ぼんやりと「また明日からがんばれそうだ」と思えるのだ。
私事ではあるが、インフルエンザとその後遺症により2月と3月の大半を寝たきりで過ごした。熱を出しながら朦朧とする意識の中で聞いた、ゆりやんレトリィバァがゲストの回は忘れられない。
ゆりやんレトリィバァのはちゃめちゃな発言に対し、ツッコミを入れたと思いきやノってくる。一つ二つ前の話題を引用して話し、最終的には「鼻水を拭きなさい!」と大きな声を出す吉岡里帆。
インフルエンザが聴かせた幻聴かと思い二度聞いたが、やはり鼻水を拭けと言っていた。吉岡里帆の穏やかな声と思考の中にある「ちょっとした俗世感」に喜びながら聞いている筆者にとってのご褒美回だった。
テレビCMなどで元気よく声を出している吉岡里帆も素敵だが、ラジオや特定の役柄でしか聞けないであろう話し声は癖になる。
○吉岡里帆の魅力は「声」と「整いすぎている顔立ち」
ここまで吉岡里帆が出演した『カルテット』『ハケンアニメ』『正体』『アイスクリームフィーバー』、そしてラジオ番組の『UR LIFESTYLE COLLEGE』を紹介した。
吉岡里帆の演技力が高いことは皆さん知っているはずなので「魅力」として挙げることはしない。様々な巡り合わせや運もあるだろうが、大前提、演技に魅力がなければ、映画やドラマにこんなにも出演することはないのだから。
なので、全員が気がついているわけではない魅力として「声」、そして「整いすぎている顔立ち」の二つを挙げたい。
一つ目の「声」だが、あまりにも心地がよい声すぎる。15分でも30分でも、あわよくばもっと長い時間吉岡里帆の声を聞いていたい。「おはようございます。吉岡里帆です」からはじまり、「おやすみなさい。吉岡里帆でした」で終わる一日を過ごしたい。役柄に合わせた声や話し方も魅力的だ。
二つ目の「整いすぎている顔立ち」は、こんなことを令和に言うと怒られそうだが、画面を通して見る顔立ちは「一般社会にいそうで、絶対にいない」のだ。
一般社会にいそうな雰囲気があるからこそ、彼女が出る作品にリアリティが出る。『正体』や、ここでは紹介していないドラマ『落日』(WOWOW)などのミステリー作品を現実と近い世界に引き寄せ、ドラマ『ひらやすみ』(NHK総合)のような日常系作品でも「こういう人いるよなあ」と感じさせる。
声のトーン、話し方、顔立ちの全てが俳優・吉岡里帆の魅力と強みにつながっていて、これからの長い人生において、どのような作品で、どのような役柄を演じるのか楽しみが止まらない。
直近では、2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』に、仲野太賀が演じる小一郎の妻、慶(ちか)役として出演が決まっている。3月29日に初登場予定だ。吉岡里帆公式Instagramでは、慶を「戦国時代、武家の娘らしい“常在戦場”の精神を持つ屈強な女性です」「かなりのクセ強キャラ」と表現している。登場が待ち遠しい。
また、2020年に公開された映画『泣く子はいねぇが』でも仲野太賀と吉岡里帆は夫婦を演じ、今回の『豊臣兄弟!』で二度目の夫婦役だ。さらに、仲野太賀とは、3月27日に公開予定の映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』でも共演している。3月最後の週末は仲野太賀と吉岡里帆を存分に楽しもう。

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