カーボンニュートラルに向け、国内でもさまざまな取り組みが実施されている。北海道電力の一部出資で2022年8月から建設が進められてきた「苫東バイオマス発電所」が完成し、2026年2月13日に営業運転が開始。
その記者向け公開・説明会が3月26日に同発電所で開催されたので、レポートする。
○木質燃料によるCO2プラスマイナスゼロの発電事業に着手

苫東バイオマス発電所は北海道苫小牧市の東部、同社苫東厚真発電所のすぐ近くにある。事業主体は北海道電力とエクイスグループ(本社・シンガポール)の出資で設立された苫東バイオマス発電合同会社で、事業用地面積は4万7,000平方メートル、発電出力5万kW、年間発電量は12万世帯分に相当する約3.4億kWhとなっている。バイオマス燃料には東南アジア等から輸入する木質ペレットを用いる。なお、北海道電力が現在関わるバイオマス発電所はこの1件のみだ。

木質バイオマス発電は燃焼を行うためCO2が発生するものの、そのCO2は燃料となる木がもともと大気から吸収したものであり、大気中のCO2としては実質ゼロになるため、京都議定書でカーボンニュートラルと認められている。

施設公開に先立ち、北海道電力 苫東バイオマスグループリーダーの長尾圭祐氏が発電所の概要を解説した。

主要設備としては木質燃料を燃焼し熱エネルギーを生成するボイラーが設置された建屋、ボイラーで発生した熱エネルギーで蒸気を発生させ、発電を行う蒸気タービン発電機の建屋、タービンで使った蒸気を水に戻す際に使う冷却水を作り出す冷却塔、さらには燃料を保管する燃料一時貯蔵棟、発電機で作った電気を送電電圧に昇圧する変電設備などがある。

この日はボイラー建屋、蒸気タービン発電機建屋、冷却塔の3カ所が公開された。

なお燃料については1日当たり600t程度、年間20万t程度の確保が必要となり、東南アジア等からバルク船での調達を実施。何らかの事情で木質ペレット調達にトラブルが発生した場合は、代替としてPKS(パームヤシ殻)を使うこともできるようになっている。その燃料もFSC認証やPEFC認証など国に認められた第三者認証を取得したものを調達している。
近隣の苫小牧西港で荷揚げし、発電所まで陸送して前出の燃料一時貯蔵棟で数週間分保管。

また港近くの中間貯蔵棟でも保管し、発電所で必要になれば補給する体制となっている。長尾氏は「営業運転開始後、運転も燃料調達も順調です」と笑顔で話した。
○再エネに地域メリットも活かして北海道のカーボンニュートラルに貢献

説明会の後、最初に案内されたのがボイラー建屋。内部には燃料と珪砂を用いた流動媒体を混ぜて燃焼させ、熱エネルギーを作り出す循環流動層ボイラーが設置されている。

ボイラー製造はオーストリアのアンドリッツ社。建屋の高さは55.5m、ボイラー自体も高さは44mあり、巨大だ。「積雪や凍結の心配がない地域では建屋自体がない場合もありますが、北海道は積雪があるためそれを考慮した設計になっています。最上階は14階で、運転員が毎日パトロールして施設の健全性を確認しています」と長尾氏が説明した。

続いては蒸気タービン発電機建屋。中央の発電機を挟んで高圧タービン、低圧タービンが設置され、低圧タービンの奥には発電の仕事を終えた蒸気を水に戻す復水器がある。高圧タービンは8,417回転/時、低圧タービンは3,000回転/時とのことだ。
タービンと発電機はドイツ・シーメンス社製を採用している。

もう一つ公開されたのが冷却塔だが、こちらは外観のみの見学となった。建屋の屋上に3基の大型ファンが置かれ、建屋下部から取り入れた外気で復水器に戻す水を冷却している。気温が低いなど気象条件によってはファンの稼働数を減らして冷却を調整することもあるという。

施設公開後には、記者からの質問に長尾氏が答えた。北海道電力にとっての苫東バイオマス発電所の位置付けを次のように語った。

「北海道電力グループは、北海道における2050年のカーボンニュートラルに向け、最大限の挑戦をしています。エネルギー供給源としては泊発電所の再稼働、再生可能エネルギーの導入拡大、経年化火力の休廃止に加え、水素・アンモニア・CCUS(CO2の回収・有効活用・貯留)により火力発電自体の脱炭素化も進めています。バイオマス発電事業は、再生可能エネルギーの中でも天候に左右されず安定的に発電できる特徴を持っているので、当社ではこの発電所の安定運転を通じ、北海道のカーボンニュートラルに貢献していきたいと考えています」(長尾氏)

また、発電所のある地域は港が近いため燃料の陸送にメリットがあること、近くの苫東厚真発電所で進めている水素・アンモニア・CCUSといった次世代エネルギー事業と連携する可能性もあることなどを表明した。カーボンニュートラル実現に向けた北海道電力のチャレンジに注目したい。
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