「まえけんは親友ですね。テレビに出始めた時期も一緒だし、営業も一緒だったんですよ」2016年4月26日、44歳の若さで亡くなったタレントの前田健さん。
あれから10年の時を経た今も、カンニング竹山の言葉の端々には、在りし日の姿と苦楽を共にした日々が色濃く残っている。2006年に亡くなった相方・中島忠幸さんと前田健さんの生年月日が1971年6月14日で全く同じという偶然も、竹山にとってはどこか“繋がり”を感じさせるものだという。

相方を亡くした喪失感の中で始まり、やがて自身の“軸”となった単独ライブ「放送禁止」は、2026年で18年目を迎える。2008年の同ライブで前田さんと共演した経験もまた、その“軸”を形づくる重要な一つとなった。インタビューの後編では、前田健さん、中島忠幸さん、そして恩人・木梨憲武――人生の節目で出会った人々との関係性から、カンニング竹山の人物像に迫る。

○相方の死から始まった「放送禁止」という軸

――「放送禁止」がスタートしたのは2008年。2006年に相方・中島忠幸さんを亡くされた直後でもありました。

そうですね。もともとコンビの漫才師、カンニング竹山のつもりだったから。解散したわけでもなんでもないのに、途中で急にピンになるわけですよ。もう、一人でやるしかない。相方が闘病中から、一人でテレビに出るようになっていましたけど、「これどうすんのよ」「どうなっちゃうんだよ」という不安がありました。
でも、やめるわけにはいかない。続けていくしかなかったんです。

――「放送禁止」を始めた時点で、5年後に中島さんのことを扱うと決めていたそうですね。

最初に(鈴木)おさむさんと約束したのが、5年後に中島の七回忌を迎えるから、それまでは「放送禁止」でも相方の話は一切しない。5年後、このライブが続いてたら、そこで相方が死んだことを全部笑いに変えて、2時間ライブをやりましょうと。それが、「カンニングのお葬式」です。おさむさんと、かなり悩んで作りました。2時間、人が死んだことで笑いを取るっていう。でも、それが「放送禁止」の大きなターニングポイントになったんですよね。業界内の評判がすごくて、その翌年からチケットが取れないライブになったんです。
○前田健さんと共に過ごした日々と残された言葉

――Prime Videoで配信中の2008年の回では、その後、2016年に亡くなられた前田健さんが出演されていました。竹山さんにとって、どのような存在だったんですか?

まえけんは親友ですよね。
テレビに出始めた時期も一緒だし、営業も一緒だったんですよ。土日に営業で一緒になって、みんなで飲むようになって、そこからですよね。俺のことを好き好き言ってて、「うるせえな」って言いながら(笑)。でも、本当に仲良かったです。

――前田さんが脚本を担当した特攻隊員の物語でしたが、あの作品の中に出てくる「必要ない人間なんて一人もいない」「意味のないものなんて一つもない」という言葉が強く印象に残りました。

まえけんは、よくそういうことを言ってました。「人間はみんな平等で、生きてることに意味がある」って。まあ、その通りですよね。僕も結構同じような考えを持ってたんで、だから気が合ったのかもしれないし。差別とか、そういうのが一番嫌いだとか、そういうところでも考えが同じだった。まえけんも、それで苦しんだものがあるんじゃないですか。自分の生き方と。
そういうことは飲んで、よく話しましたよ。

――前田さんから学んだこと、影響を受けたこともあったんですね。

今思うと、まえけんの存在は大きかったですね。ジェンダーのことなんか、彼がいなかったら自分の知識になるのも遅かったと思います。当時は、性的マイノリティについて、今みたいにみんなが知ってる時代じゃなかったから。

自分みたいなタイプの人もたくさんいるとか、そういうのをいっぱい話して教えてくれて、自分の人生で今でもすごく役立ってますよ。『昼酒』(BS-TBS『カンニング竹山の昼酒は人生の味。』毎週月曜23:00~23:30)でもいろいろな方と会いますが、何とも思わないし、普通に話せる。それはまえけんのおかげなのかもしれないですね。

――先ほどもおっしゃっていましたが、竹山さんにとって“親友”と呼べる大切な方だったんですね。

そうですね。親友になるのかな。
やっぱり。ザキヤマとか有吉は、心の中では100パー信用してるやつだけど、やっぱり後輩だからね。まえけんは、親友って言っていいんじゃないですかね。
○木梨憲武との出会いが変えた職業観「仕掛けろ」

――40代で人生観を変えた存在として、木梨憲武さんの名前をいつも挙げられていますね。

木梨さんにも、めちゃくちゃ影響受けてますね。40代前半の時に出会って、変わりました。あれがなかったら、どう生きていくのかとか仕事をどうするのかとか、今のようにならなかったので結構やばかったかもしれないと今振り返って思います。木梨さんと会わなかったら、発案から関わった『昼酒』のような番組も生み出せていないはずです。

――相談相手というより、背中を見せてくれるような存在でしょうか?

そうですね。もちろん本当にやばい時は相談しますけど、一番ありがたかったのは、「竹山、仕掛けろ」って言われたことですね。「仕事は待っててもしょうがねえんだよ。芸能なんか仕事減っていくんだから、仕掛けるんだよ。
自分で作って仕事にしていくんだよ。それが面白いだろ」って。あと、「絶対に振り向くな、振り返るな。反省してもしょうがない。終わったことだ」って。「遊びを仕事に変えろ、仕事を遊びに変えろ」というのも、ずっと言われてました。木梨さんを見てると、おじさんになってもこんなに楽しく挑戦できるんだなって希望を持てるんですよ。

――木梨さんとの出会いで、仕事との向き合い方も変わったと。

変わりましたね。30歳まで全く売れない人生でしたけど、人との出会いにおける運が一番良かったのかもしれない。ポイントポイントで、拾ってくれた人、認めてくれた人がいるんですよ。テレビ朝日の藤井(智久)さん、片岡飛鳥さん、放送作家の渡辺真也さんとか、いろんな人がいて。
ある程度40代で売れはしたものの、「俺どうなっちゃうんだろう」という時に、木梨さんとガッツリ出会う。そういう出会いが大きかったですね。
○人との出会いが導いた現在地と「何も決めない」生き方

――多くの人との出会いによって彩られた、竹山さんのこれまでの人生。これからの人生設計は、どのように考えていますか?

それはね、よく分かりません。いま本当に思ってるのは、何も決めない。何も決めない方が面白くねえかっていう。「60になったらこうしたい」とか言って、そのときにできなかったら苦しむことになるでしょう。だから、何も決めない。その年はその年の流れがあるはず。やりたいことやるんだ、目の前の。それに尽きると思います。

やりたいこととしては、もっと番組を作ってみたいですね。スタッフと話し合いながら、「こういうの面白いんじゃない?」っていうアイデアを形にしていきたい。もしかしたら、それがネットメディアになるのかもしれないけど、そういう仕掛けていきたいことはまだありますね。ただ、やっぱり規制があったり、お金の問題もあるから、選択肢はどんどん減ってきますよね。でもそこばっかり気にせず、「こんなんやりたい」と純粋に思ったことを続けていきたいです。

「放送禁止」は1年に1回やって、それとは別にまた違うライブを作るかもしれないし、配信とか全国ツアーとかもやるかもしれない。でも「放送禁止」は、最初におさむさんと決めた通り、商売のためにやらない。お客さんがゼロでもいい、関係者や芸人だけでもいい、その代わりプロをうならせるライブを作ろうっていうところから始まってるから。そこは変わらないですね。

――出会いの話がありましたが、何よりも鈴木おさむさんは竹山さんの人生を語る上で欠かせない方の一人ですね。

すごい人ですよね。僕のことをよく知ってくれていて、僕をどう料理すれば生かせるのかわかってる(笑)。洞察力がすごいのはもちろんですが、おさむさんしかない感覚でしょうね。あと、何事も面白がるっていう才能なんじゃないですかね。何事も早くてアンテナは常に張ってる人なので、未だに「面白いおじさんと組んでるな」って思いますよ。
○2026年「放送禁止」は「リスクしかない無駄なことをやる」

――見どころは話せないと思いますが、今年の「放送禁止」(東京・池袋のサンシャイン劇場で4月2日~5日に開催)について話せることはありますか?

とんでもないことをやります。たぶん、「これをライブでやるの?」というとんでもないことを。何の意味もないけど、「何のためにこれやるの?」とお客さんが思うような、リスクしかない無駄なことをやります。だから学びも何にもないと思います。今回は、涙もないかもしれない。去年からはだいぶ変わったのですが、今年はさらに変えます。

今では高評価をいただくようになりましたけど、もうそれはいいよねと。またそういうのも作るかもしれないけど、ずっとそういうことをやる人間じゃない。もともとは、くだらねえ人間なんですよ。僕は。だったらやろうよ、リスク背負って。だから、もしかしたらダメなライブになるかもしれないし、いいライブになるかもしれない。まだこの段階では分からないです。

■プロフィール
カンニング竹山 1971年4月2日生まれ、福岡県出身。サンミュージックプロダクション所属。お笑いコンビ・カンニングとして活動後、相方・中島忠幸さんの闘病と死去を経てピン芸人として活動。バラエティ番組をはじめ、情報番組、俳優業、ラジオ、番組企画など幅広く活躍する。2008年から単独ライブ「放送禁止」を毎年開催している。
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