キリンビールは4月3日から4月5日までの3日間、渋谷・三千里跡地イベントスペースにて『CRAFT AROMA SHOP Presented by SPRING VALLEY BREWERY』を開催している。ホップの香りとクラフトビールが楽しめる、期間限定のショップとなっている。


○店舗の概要

『CRAFT AROMA SHOP』は、ホップの香りに着目したアロマショップ。1階では「ムラカミセブン」「IBUKI」「ネルソン・ソーヴィン」の香りを楽しめる。なお、アロマの販売は行っていない。入場は無料。

そして、店舗の2階および地下にバーを用意した。SPRING VALLEY BREWERYの3種類のクラフトビールを500円で楽しめる。予約は不要。キリンビールでは、3日間の来店者数の目標を1,300人と定めている。

○ホップの香りで選ぶという提案

店舗をオープンする狙いについて、キリンビール クラフトビール事業部の久保育子氏は以下のように説明する。

「クラフトビールの魅力のひとつに、香りがあります。クラフトビールは使用するホップの種類によって香りの個性が大きく変わり、それぞれの味わいや世界観を形づくっています。本イベントでは、そんなクラフトビールのホップに着目しました。
アロマという切り口から、ホップの新たな魅力を体験いただければ嬉しいです」

折しも、日本産ホップを取り巻く環境は厳しさを増している。農家の高齢化により、生産者数も生産量も減少傾向が続いている状況だ。そこでキリンビールでは現在、行政とも連携して持続可能な日本産ホップの”産地づくり”の支援を続けている。久保氏は「日本産ホップを使ったビールの美味しさ、生産者の思いをお客様に伝え、地域・市場の活性化に貢献していければ」と話す。その一環として、SPRING VALLEY BREWERYでは「奇跡の日本産ホップによる香り」に焦点を当てたビール体験の提案に至った。キャッチは「香りでビールを選んでみませんか?」。

あらためて『SPRING VALLEY BREWERY JAPAN エール 香』は、ムラカミセブンを一部使用したクラフトビール。和柑橘のような、爽やかな香りが特徴となっている。2023年の発売以来、国内外で高い評価を得ているが、これまで久保氏には1つだけ心残りがあったという。「実は2023年の時点ではムラカミセブンの収量が安定しておらず、思うような量のホップが使えなかったんです。あれから数年が経ち、栽培エリアも拡大できました。そこで直近のリニューアルのタイミングで、ムラカミセブンの使用量を従来の2倍まで増やしています」。


キリンビールでは、様々なチャネルでムラカミセブンの香りとストーリーを伝えていく。たとえば直営店SVB東京・京都では、ホップの香りがより強く感じられるよう、敢えて泡を立てずに注ぐ「香り立ち注ぎ」で『JAPAN エール 香』を提供する。渋谷では既述の通り『CRAFT AROMA SHOP』を開催。また首都圏 / 大阪を中心に、ムラカミセブンから着想を得たアロマオイルを使ったサウナロウリュウの展開も予定している。

○ムラカミセブンとは?

そもそも日本産ホップ「ムラカミセブン」とは、キリンビールの元社員である村上敦司氏が開発した品種。社内でホップの品質改良に従事していた村上氏は、2000年に農学博士号を取得した際、基礎研究の実験材料に使っていたホップをすべて捨てるつもりだった。しかし後年の研究のために20株だけ残し、これを岩手県奥州市江刺の畑に植え替え、江刺1号~江刺20号と名前を付けて育てた。そして2003年、成長したホップを使ってビールを作ってみると「とんでもなく素晴らしい香りがするホップ」(村上氏)を発見した。それが江刺7号だった。栽培特性を調べてみると、手間がかからないのに収量がとれる、という理想的なものだった。

実際に商品化できたのは2016年のこと。SVB東京で提供するために「江刺7号」に代わるネーミングが求められたが、思いつかなかった。
そこで「俺はセンスないから任せるよ」と担当者に一任すると「MURAKAMI SEVEN IPA」という名称に決まった。本人は「あとから知らされて、知らないところで商標までとってて」と苦笑いで当時のことを振り返る。同氏は2020年にキリンビールを早期退職し、現在は岩手県遠野市で活動中。GOOD HOPSという企業を立ち上げ、醸造責任者を務めている。

今回の『CRAFT AROMA SHOP』は、“香り”を通じて身体感覚を蘇生させることをテーマに活動する嗅覚のアーティスト和泉侃(いずみ かん)氏が監修している。ムラカミセブンの生みの親は、そのアロマについてどんな感想を抱いているのだろう?トークセッションにおいてMCから「率直な感想を聞かせてください」と聞かれた村上氏は「とても的確にムラカミセブンのモチーフを捉えていて、本当に驚きました。ここまで分かってくれてるんだと、すっごく嬉しくて」と笑顔。これを受け、和泉氏は「よかったです、安心しました」と安堵の表情をみせる。ホップを使ったフレグランスは一般的ではないため、和泉氏としてもチャレンジングな試みだったようだ。

和泉氏は、次のように語る。「どの部分を切り取って香りをイミテーションしていくのが正解なんだろう、と悩みました。最終的にはビールそのものではなく、フレッシュで豊潤な香りが出ているときのホップ、これに近い香りをイメージして製作していきました。
日常的にホップに向き合っている方の解像度、視点は自分にとって新鮮で、とても良い勉強になりました。村上さんにも香りのサンプルを送り、2~3ターンのやり取りがあって完成しました」。

イベントについて、村上氏は「ホップの香り、その魅力をたくさんの方に楽しんでいただけたら。ホップの世界ってこんなに深くて多様なんだ、と感じてもらえたら、私どもとしては嬉しい限りです」、和泉氏は「ムラカミセブンをはじめ、ホップの特徴的な部分をある意味、デフォルメしたような形で作ったフレグランスを用意しています。これを嗅ぐことで、クラフトビールの特徴がより鮮明になるのでは。イベントが、そんなきっかけになれば嬉しいです」と話した。
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