私が住む町内で月に二度、木綿豆腐を作ってくださる夫婦がいます。

たいてい、できたての豆腐を取りに行くのは平日の正午近く。

帰ってくる時間に合わせて炊飯器のスイッチをセットしておきます。

自宅に戻ると、炊き立てのご飯を大皿の上に敷き、その上に半分に切った豆腐をのせます。

箸ではなく、大ぶりのスプーンかれんげを使い、豆腐をこぼさないように、慎重に崩しながら、ゆっくりかき混ぜます。

炊き立てのご飯に大豆の香りが、ふんわりと立ち上がる瞬間がたまらない。

もちろん、どんぶりでもいいのですが、豆腐とご飯をかき混ぜにくいので、私は大皿を使っています。

かき混ぜたら、上から醤油を少しだけ足らします。

刻んだネギやミョウガがあれば、途中で加えると、さらに楽しい。

しかし、シンプルに豆腐と醤油だけでも充分、美味しく、味を変えることを忘れて、最後まで食べてしまうことも。

かき混ぜ方で、いろいろ楽しむこともできます。豆腐が細かくなるまで、かき混ぜてもいいし、ところどころ、ごろっと大きな豆腐の塊があるのもいい。

かき混ぜて食べた方が美味しいが、かき混ぜたご飯は、決して美しくはありません。

風呂上がりに裸で過ごすのと同じとまでは言いませんが、できれば家族にも見せたくはない。

私は、これを「自分メシ」と呼んでいます。

自分メシは自宅のひとりメシ、もしくは、ひとり旅の宿泊先に限られます。

先日も旅先の道の駅で美味しそうな木綿豆腐と地産醤油の小さなボトルを見つけ、

弁当屋で白飯だけを購入し、ホテルで「自分メシ」を堪能しました。

いつもトランクに入れてある木製の大皿が大活躍。

決して高級ではないが、自分ひとりで簡単に楽しむことができる「自分メシ」があるというのは幸せなことです。<text:イシコ>

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