一週間ほど同じ場所に滞在する際、

「ここに住んだらどんな生活を送るだろう」

と考えることはいつものことです。

その中で飲食は重要な要素。

「どこの店に通うかなぁ」

と考えながら散歩すると楽しさは増します

マレーシアのコタバルに滞在した時のこと。

国内でもイスラム色が一番強いと言われ、

到着直後、町に設置されたスピーカーからコーランの詠唱が流れ、異国情緒に酔いしれました。

でも、ふと思います。

「イスラムだからアルコールがないか」と。

ないならないでいいんだけど……と思いながらも、

ビールが飲めそうな場所を探して歩き始めました。

路面から店内の様子を見て、壁にビールのポスターを探すのです。

すると居心地悪そうに小さなポスターが貼られた店を見つけました。

入口の軒先に強面で無表情のおじさまが立ち、目の前に小さな鍋を並べて肉や野菜を盛り付けています。

私が中の様子を探っていると「ジロリ」とにらみつけられました。

軽く会釈して中に入ります。

奥さまらしき女性が注文を取りに来たので、

他の客が食べている小さな鍋とビールのポスターを指差しました。

豚のスペアリブを薬膳スープで野菜と一緒に煮込んだ身体によさそうで美味しい。

「バクテー」と呼ばれるマレーシア料理でした。

結局、毎日通います。

3日目くらいから、奥さまが「あら?また来たの?」といった感じで、笑顔で迎えてくれるようになりました。

旦那さまはあいかわらず無表情の強面だけど。

最終日、「明日、この町を出るんです」と片言の英語で言うと、

奥さまがおじさまに伝え、無表情だった彼が、にやりと笑って軽く会釈してくれました。

通ったからこそ出会えた笑顔です。<text:イシコ>

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