象印100周年を機に取り組まれた「STAN.」プロジェクト。その後、シリーズのヒットのみならず、象印のデザイン全体の変化のきっかけとなっています。
象印のデザインが変わったきっかけだった、「STAN. 」プロジェクト
▲象マークが小さくあしらわれる、STAN.シリーズ(展示より)「象のマークを単体で象印の製品に載せるようになったきっかけはSTAN.だった。」冒頭、商品企画部長・堀本さんは象のシンボルマークの扱いの変化から話がスタートしました。
STAN. シリーズのプロジェクトは、象印の創業100周年を前にしたタイミングからスタートしたもの。新しい世代の価値観を大切にした商品づくりを目指し、クリエイティブユニット「TENT」と協同しています。プロジェクト開始当時、TENTから提案されたのが、家電でありながら暮らしに馴染む「うつわ」としてデザインするという発想。様々なディテールがその言葉にしたがって決められていく中で、象印のうつわ製品=魔法瓶でのみ採用されていた「象」単体のシンボルマーク使用もその理由からでした。
その後ヒット商品となったSTAN. シリーズ。象単体を打ち出すデザイン展開も、「かわいい」と若い世代に受け入れられる実感がありました。堀本さんは、STAN.のリリース以降、象印のデザインは質感といった細部の判断に至るまで、ブランド全体で変化が訪れていることを強調しました。
STAN. の新商品はユーザー待望の声があった、電気ケトルとスチーム式加湿器
「今回の新商品は、これまでのSTAN. ユーザーから待望されていたラインナップ」とSTAN. 担当のデザイナーの内藤さんからご紹介。発表されたのは、電気ケトルとスチーム式の加湿器。いずれもブラック・ホワイトの2色のカラーバリエーションがあります。

続けて開催されたトークセッションでは、象印のデザイナーでありSTAN. 担当の内藤さんと、クリエイティブユニットTENTの共同代表である治田さん・青木さんの3名でSTAN.のデザインコンセプトと新商品について言葉が交わされました。
TENTの治田さんからは、STAN.には、随所に作り手のこだわりや工夫があることが語られました。例えば新商品の電気ケトルは、ハンドルと胴のちょうどいい連続感の追求、スチーム加湿器は、操作するときだけ浮かび上がる操作パネル部の秘密など、シンプルな見た目にまとめるまでの試行錯誤があるといいます。
「使わない時には存在感を消す。それが暮らしに寄り添う加湿器のあり方だと考えました」(TENT・治田さん)

また、実際にSNSで広がるSTAN.ユーザーの声として、RoomClipでの投稿もピックアップ。デザイナーのみなさんならではの気づきや、利用シーンを見る喜びが語られました。
「子どもと一緒に写る写真がうれしい。美術館の作品のように置かれるのではなく、暮らしの風景として存在してほしいと思っていました」(TENT・青木さん)
「かごと並ぶ写真を見て、家電が『生活の道具』として受け入れられていると感じます」(象印マホービン・内藤さん)
TENTの青木さんは、これまで家電は性能差を追求することに偏りがちだったと振り返ります。性能は「象印の家電」という時点で安心感があるからこそ、「暮らしに馴染む」一点にデザインを集中できたとのこと。

RoomClipユーザーさんの声がデザインを動かしたポイントは?

ちなみに今回の新商品には、RoomClipユーザーさんの声が反映されている面もあります。開発期間中に開催された、RoomClip内のSTAN. ユーザー座談会で、多くの意見が交わされました。
例えば電気ケトルでは、「ドリップコーヒーからカップ麺まで幅広く使う」という声を受け、湯量調整の機能が採用されたり、当初採用される予定だった水量窓を「無い方がキッチンでのたたずまいがよく、水を入れるときだけわかれば良い」という声から外すといった決定がなされています。
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一部の既存製品のリニューアルにもユーザーさんの声は反映されており、同日に発表されたIH炊飯ジャーの天面マット仕様への変更や、「キッチンを白で統一したい」という要望をかなえるオーブントースターの白色追加が行われています。
象印の新しいデザインビジョンが伝える、暮らしに寄り添い、「家電らしさ」から離れる未来
イベントの最後に、デザイングループ長・岡島さんより、100周年以降を機に、企業理念とデザインを新たに結びつける「デザインビジョン」を掲げ、現在の象印のデザインはこれに基づくことが伝えられました。
新商品という単体の発表にとどまらず、これからの象印のデザインについてまで伝えられた今回のSTAN.説明会。暮らし、生活者と同じ目線に立つことを大切にする家庭日用品メーカーとしての想いが語られるイベントとなりました。

執筆:RoomClip mag 編集部