資生堂が1987年より独自に行っているヘアメイクのトレンドを調査・分析・予測する「ビューティートレンド研究」に基づき、平成という時代とともに変化してきた女性たちの意識や美容のトレンドについて紐解いた。今から辿るその日本女性のヘアメイクにおけるトレンド変遷は、なんと全て1人のモデルで再現されているのだ。
「平成」がスタートしたのは、バブル景気に沸き、女性らしさをアピールするファッションやヘアメイクが全盛だった1989年。男女雇用機会均等法(1985年)施行後の世代として、美容、ファッション、フィットネス、資格取得などの“自分磨き”にお金と時間を費やす女性が増え、日本独自の文化や美容意識が次々と生まれた。
それまで10年単位で変化していたトレンドは、平成に入ってからは4~5年単位で移り変わるようになり、若年層が流行を牽引する時代に。なかでもミレニアル世代は、自分たちが生まれた頃に流行した過去の文化をアップデートしながら柔軟に取り入れて楽しむ傾向が。つまり、彼女たち独自の価値観や要素を加えながら新たな潮流を生み出しつつも、トレンドは一巡していることがわかる。
平成元年~5年(1989~1993年)
昭和の名残を感じさせるバブルゴージャス
バブルの絶頂期を迎えた平成元年。海外旅行などの贅沢を謳歌する女性たちが増え、本物志向や高級志向の高まりもあって、空前の「お嬢様ブーム」が到来。「ボディコン(ボディコンシャス)」で女性らしさをアピールするファッションが人気となり、一方で「渋カジ」と呼ばれた、紺ブレにデニムを合わせたトラッドで上品なカジュアルスタイルや、コンサバティブなファッションも流行した。
この頃のメイクの特徴は、レッドや青味がかったローズピンクなど、ビビッドな色味のリップカラー。口元以外は全体的にナチュラルで、アイシャドウも淡いローズやパープル系などで女性らしく仕上げるのがトレンドに。ヘアスタイルは、「ワンレン(ワンレングス)」のロングが主流。さらに、前髪を立たせた「とさかヘア」や薄くおろした「すだれ前髪」、毛先のみにパーマをかけた「ソバージュ」もこの時代を象徴するスタイル。
→次は平成6~10年へタイムトリップ! ---- 平成6~10年(1994~1998年)
スーパーモデルブームに影響を受けた茶髪・細眉・小顔メイク
バブル崩壊後、長く続く平成不況に突入し、さまざまな分野で安価な商品が人気に。パソコンや携帯電話が一般に広く普及し始め、得られる情報量が格段に増えた。ファッションでは、ルーズソックスのブームをきっかけに女子高生に注目が集まり、厚底ブーツやミニスカートなどのいわゆる「ギャル文化」が台頭。彼女たちが社会に与える影響も大きくなり、ファッションの幅や自由度が広がっていく。
スーパーモデルブームと相まって、茶髪、細眉、小顔メイクが大流行。髪色に合わせた眉のブリーチや、下地でツヤ肌を演出するなど、細部へのこだわりも見られ、美容への関心が一気に高まった。また、光沢感のあるファッションの流行と連動して、パールアイシャドウやベージュ系リップが主流になるなど、クールで近未来的なメイクがトレンドに。 メディアではカリスマ美容師が注目され、レイヤーカットやシャギーカットが提案された。
→次は平成11~15年へタイムトリップ! ---- 平成11~15年(1999~2003年)
大胆な囲み目とブロンズ肌でギャルメイクが独自に進化
ミレニアムのこの時期、ストリートファッションはかつてない盛り上がりを見せ、ギャル系、エレガント系、裏原(裏原宿)系など、流行のピラミッドがいくつにも枝分かれし、カテゴライズ化されていった。この頃に印象的なのが、90年代の「ギャル文化」が渋谷を中心としたエリアで独自に進化したこと。カラフルな原色の服、花の髪飾り、個性的なヘアメイクなど、奇抜なストリートスタイルが流行し、海外からも注目が集まった。
この層のメイクの最大の特長は、小麦色の肌。
→次は平成16~20年へタイムトリップ! ---- 平成16~20年(2004~2008年)
モテを意識した女子力高めの盛りメイクがブームに
不況や格差が深刻化した平成16年以降は、不安感からか、安定志向や結婚願望の高まりが顕著に。婚活ブームが起こるとともに、女性たちの「モテ意識」も強くなっていった。フリルやレースを使ったロマンティックなファッションや、手軽にトレンドを楽しめるファストファッションの人気が拡大。また、インターネットの普及も急速に進み、トレンド情報をいち早く発信するブロガーが注目を浴びた。
メイクはナチュラルな色使いが人気で、アイシャドウはブラウン、リップはピンクベージュ。色はナチュラルながら、より女性らしさを強調する「盛りメイク」が大流行。囲み目やマスカラの重ねづけ、つけまつげなどで目を大きく見せ、口元はリップにグロスを重ねてツヤを与えるなど、さりげなく“盛る”のが常識。さらに、カラーコンタクトやまつげエクステなど、化粧品以外の手段も駆使するといった美容熱の高まりが見られた。
→次は平成21~25年へタイムトリップ! ---- 平成21~25年(2009~2013年)
ゆるふわ癒し系、大人カワイイ女子がトレンドを牽引
不況の深刻化と同時に、「勝ち組・負け組」といった格差意識が社会に蔓延していたが、2011年の東日本大震災を機に、世の中全体の価値観や、消費マインドに変化が現れ始めた。女性たちも本当に必要なものは何かを自問自答し、身の丈に合った消費傾向に。ファッションも肩の力が抜けた「脱力系ゆるふわ」の自然体へと移行し、癒しブームが到来。この頃、若年層から派生した“カワイイ”文化やファッションは、海外からも注目され、「KAWAII」が世界共通語に。
メイクもファッションと同様に力の抜けたナチュラルな傾向が強まり、下まぶたにパールのハイライトを効かせた「涙袋メイク」や、頬の高い位置に頬紅を入れる「湯上りチーク」などが出現。ヘアは、パーマやヘアアイロンで柔らかくふんわりと見せる巻き髪スタイルや、毛先を内巻きにしてエアリーな空気感を漂わせるナチュラルスタイルが支持された。
→次は平成26年~現代へタイムトリップ! ---- 平成26~現在(2014~2018年)
80~90年代のトレンドが回帰、抜け感バブルリバイバル
景気の緩やかな回復や訪日観光客の増加などで、好景気への期待が高まった平成末期。ミレニアル世代の存在感が増し、カテゴリーに縛られない新しい価値観を楽しむ人が増加した。ファッションは、ハイウエストボトムやプロデューサー巻き、スニーカーブームなど、80~90年代のトレンドがリバイバル。動画投稿サイトや画像共有SNSなどの普及により、自撮り写真を発信する傾向が顕著になり、多くのインフルエンサーが登場した。
メイクはやや大人っぽい「レディ」「モード」がキーワードに。バブル期を想起させる「ナチュ太眉」といった、色が明るく短めの太い眉が特徴。
→次は未来へタイムトリップ! ---- 平成から新元号へ! 今後のヘアメイクのトレンドは?
一周まわってフューチャリスティック
カテゴリーにとらわれない多様な価値観を楽しむ傾向が広がりを見せる今、新しい時代を代表するトレンドは、従来のように単一には絞れず、数ある情報の中から、それぞれが新しさを取捨選択していくことになるだろう。ヘアメイクの世界でも、個性を際立てる「パーソナライズ化」が加速。気分やシーンによってさまざまな装いを楽しむ「多様性」の傾向にあり、表現の幅や選択肢がさらに広がる予感。
「多様性」の一例として、90年代後半の近未来的なファッションとメイクのトレンド「フューチャリスティック」が新たな解釈でリバイバルされていることが挙げられる。形や色よりも質感を重視する傾向があり、ツヤのある素肌っぽいベースメイクに、パールシャドウや光沢感のあるリップをプラスするなど、すっきりとクールでイノセントな印象が新鮮。まつげにワンポイントのカラーをのせるなど、プレイフルな表現もありそう。
過去30年間を振り返ると、平成の時代は変化の周期が非常に早かったことが読み取れる。それと同時に、ヘアメイクのトレンドが世相を反映することも再認識。改元が行われる来年以降、女性の意識やトレンドがどのように変化していくのか、とても楽しみだ。
「平成」がスタートしたのは、バブル景気に沸き、女性らしさをアピールするファッションやヘアメイクが全盛だった1989年。男女雇用機会均等法(1985年)施行後の世代として、美容、ファッション、フィットネス、資格取得などの“自分磨き”にお金と時間を費やす女性が増え、日本独自の文化や美容意識が次々と生まれた。
それまで10年単位で変化していたトレンドは、平成に入ってからは4~5年単位で移り変わるようになり、若年層が流行を牽引する時代に。なかでもミレニアル世代は、自分たちが生まれた頃に流行した過去の文化をアップデートしながら柔軟に取り入れて楽しむ傾向が。つまり、彼女たち独自の価値観や要素を加えながら新たな潮流を生み出しつつも、トレンドは一巡していることがわかる。
平成元年~5年(1989~1993年)
昭和の名残を感じさせるバブルゴージャス
バブルの絶頂期を迎えた平成元年。海外旅行などの贅沢を謳歌する女性たちが増え、本物志向や高級志向の高まりもあって、空前の「お嬢様ブーム」が到来。「ボディコン(ボディコンシャス)」で女性らしさをアピールするファッションが人気となり、一方で「渋カジ」と呼ばれた、紺ブレにデニムを合わせたトラッドで上品なカジュアルスタイルや、コンサバティブなファッションも流行した。
この頃のメイクの特徴は、レッドや青味がかったローズピンクなど、ビビッドな色味のリップカラー。口元以外は全体的にナチュラルで、アイシャドウも淡いローズやパープル系などで女性らしく仕上げるのがトレンドに。ヘアスタイルは、「ワンレン(ワンレングス)」のロングが主流。さらに、前髪を立たせた「とさかヘア」や薄くおろした「すだれ前髪」、毛先のみにパーマをかけた「ソバージュ」もこの時代を象徴するスタイル。
→次は平成6~10年へタイムトリップ! ---- 平成6~10年(1994~1998年)
スーパーモデルブームに影響を受けた茶髪・細眉・小顔メイク
バブル崩壊後、長く続く平成不況に突入し、さまざまな分野で安価な商品が人気に。パソコンや携帯電話が一般に広く普及し始め、得られる情報量が格段に増えた。ファッションでは、ルーズソックスのブームをきっかけに女子高生に注目が集まり、厚底ブーツやミニスカートなどのいわゆる「ギャル文化」が台頭。彼女たちが社会に与える影響も大きくなり、ファッションの幅や自由度が広がっていく。
スーパーモデルブームと相まって、茶髪、細眉、小顔メイクが大流行。髪色に合わせた眉のブリーチや、下地でツヤ肌を演出するなど、細部へのこだわりも見られ、美容への関心が一気に高まった。また、光沢感のあるファッションの流行と連動して、パールアイシャドウやベージュ系リップが主流になるなど、クールで近未来的なメイクがトレンドに。 メディアではカリスマ美容師が注目され、レイヤーカットやシャギーカットが提案された。
→次は平成11~15年へタイムトリップ! ---- 平成11~15年(1999~2003年)
大胆な囲み目とブロンズ肌でギャルメイクが独自に進化
ミレニアムのこの時期、ストリートファッションはかつてない盛り上がりを見せ、ギャル系、エレガント系、裏原(裏原宿)系など、流行のピラミッドがいくつにも枝分かれし、カテゴライズ化されていった。この頃に印象的なのが、90年代の「ギャル文化」が渋谷を中心としたエリアで独自に進化したこと。カラフルな原色の服、花の髪飾り、個性的なヘアメイクなど、奇抜なストリートスタイルが流行し、海外からも注目が集まった。
この層のメイクの最大の特長は、小麦色の肌。
実際に日焼けをする人もいれば、濃い色味のファンデーションやフェイスパウダーで日焼け肌を演出する人も。目の際をアイラインで縁取る囲み目メイクと薄い色の眉を組み合わせ、目元をより強調したメイクがトレンドに。ヘアは、ハイトーンのイエロー、アッシュ、ハイブリーチなど、色のバリエーションが増加。ヘアカラー人口もさらに増えて一般化した。
→次は平成16~20年へタイムトリップ! ---- 平成16~20年(2004~2008年)
モテを意識した女子力高めの盛りメイクがブームに
不況や格差が深刻化した平成16年以降は、不安感からか、安定志向や結婚願望の高まりが顕著に。婚活ブームが起こるとともに、女性たちの「モテ意識」も強くなっていった。フリルやレースを使ったロマンティックなファッションや、手軽にトレンドを楽しめるファストファッションの人気が拡大。また、インターネットの普及も急速に進み、トレンド情報をいち早く発信するブロガーが注目を浴びた。
メイクはナチュラルな色使いが人気で、アイシャドウはブラウン、リップはピンクベージュ。色はナチュラルながら、より女性らしさを強調する「盛りメイク」が大流行。囲み目やマスカラの重ねづけ、つけまつげなどで目を大きく見せ、口元はリップにグロスを重ねてツヤを与えるなど、さりげなく“盛る”のが常識。さらに、カラーコンタクトやまつげエクステなど、化粧品以外の手段も駆使するといった美容熱の高まりが見られた。
→次は平成21~25年へタイムトリップ! ---- 平成21~25年(2009~2013年)
ゆるふわ癒し系、大人カワイイ女子がトレンドを牽引
不況の深刻化と同時に、「勝ち組・負け組」といった格差意識が社会に蔓延していたが、2011年の東日本大震災を機に、世の中全体の価値観や、消費マインドに変化が現れ始めた。女性たちも本当に必要なものは何かを自問自答し、身の丈に合った消費傾向に。ファッションも肩の力が抜けた「脱力系ゆるふわ」の自然体へと移行し、癒しブームが到来。この頃、若年層から派生した“カワイイ”文化やファッションは、海外からも注目され、「KAWAII」が世界共通語に。
メイクもファッションと同様に力の抜けたナチュラルな傾向が強まり、下まぶたにパールのハイライトを効かせた「涙袋メイク」や、頬の高い位置に頬紅を入れる「湯上りチーク」などが出現。ヘアは、パーマやヘアアイロンで柔らかくふんわりと見せる巻き髪スタイルや、毛先を内巻きにしてエアリーな空気感を漂わせるナチュラルスタイルが支持された。
→次は平成26年~現代へタイムトリップ! ---- 平成26~現在(2014~2018年)
80~90年代のトレンドが回帰、抜け感バブルリバイバル
景気の緩やかな回復や訪日観光客の増加などで、好景気への期待が高まった平成末期。ミレニアル世代の存在感が増し、カテゴリーに縛られない新しい価値観を楽しむ人が増加した。ファッションは、ハイウエストボトムやプロデューサー巻き、スニーカーブームなど、80~90年代のトレンドがリバイバル。動画投稿サイトや画像共有SNSなどの普及により、自撮り写真を発信する傾向が顕著になり、多くのインフルエンサーが登場した。
メイクはやや大人っぽい「レディ」「モード」がキーワードに。バブル期を想起させる「ナチュ太眉」といった、色が明るく短めの太い眉が特徴。
しばらく見られなかった赤リップや鮮やかなローズ、ビビッドなピンクなど、ブライトな口紅がバブル期以来、初めて流行。ヘアはボブスタイルがトレンドとなり、「かきあげ前髪」やバブル期に「すだれ前髪」と呼ばれた薄くおろした前髪が「シースルーバング」として再び人気に。
→次は未来へタイムトリップ! ---- 平成から新元号へ! 今後のヘアメイクのトレンドは?
一周まわってフューチャリスティック
カテゴリーにとらわれない多様な価値観を楽しむ傾向が広がりを見せる今、新しい時代を代表するトレンドは、従来のように単一には絞れず、数ある情報の中から、それぞれが新しさを取捨選択していくことになるだろう。ヘアメイクの世界でも、個性を際立てる「パーソナライズ化」が加速。気分やシーンによってさまざまな装いを楽しむ「多様性」の傾向にあり、表現の幅や選択肢がさらに広がる予感。
「多様性」の一例として、90年代後半の近未来的なファッションとメイクのトレンド「フューチャリスティック」が新たな解釈でリバイバルされていることが挙げられる。形や色よりも質感を重視する傾向があり、ツヤのある素肌っぽいベースメイクに、パールシャドウや光沢感のあるリップをプラスするなど、すっきりとクールでイノセントな印象が新鮮。まつげにワンポイントのカラーをのせるなど、プレイフルな表現もありそう。
過去30年間を振り返ると、平成の時代は変化の周期が非常に早かったことが読み取れる。それと同時に、ヘアメイクのトレンドが世相を反映することも再認識。改元が行われる来年以降、女性の意識やトレンドがどのように変化していくのか、とても楽しみだ。
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