アクネ ストゥディオズ(Acne Studios)が、パリ10区プティト・エキュリー通りに建つ歴史的建造物「旧ゴメノール研究所」を改装し、新たな本社を開設しました。クリエイティブ・ディレクターのジョニー・ヨハンソンと、スウェーデンのデザインスタジオ Halleroed(ハレロード)が手掛けたプロジェクトは、1930年代の荘厳な建築を尊重しつつ、現代的なアートとデザインを織り交ぜたもの。
都市の記憶を未来へと継承しながら、ファッションブランドの創造拠点へと変貌させています。

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Courtesy of Acne Studios

建築本来の美しさと現代性の対話
ヨハンソンは「建築本来の美しさへの賛歌」としてこの改装に臨み、既存構造に最小限の介入しか行わないことを選びました。金箔のモールディングや寄木張りの床といった歴史を刻むディテールは丁寧に修復され、そこにダニエル・シルバーの彫刻やルーカス・グシュワントナーの家具、ネイルアーティストのシルヴィー・マクミランによるキャンドルスタンドなどが調和。1930年代に建てられた研究施設としての記憶と、現代の創造性が共鳴する空間へと生まれ変わっています。

アクネ ストゥディオズが歴史的研究所を改装したパリ新本社を開設。建築とアートが響き合う創造の拠点
Courtesy of Acne Studios

ブランドカラーが際立つショールーム
改装後のショールームは、ヴォールト型ガラス天井やむき出しのコンクリート柱をそのまま残し、建築の素地を活かした劇場のような場に仕上げられました。そこに置かれたのは、ブランドを象徴するピンクで仕立てられたマックス・ラムによる巨大ソファ。アクネ ストゥディオズが好んで用いるピンクは、単なる装飾色ではなくブランドのアイデンティティを示すシグナルであり、白い壁との対比によって強烈な存在感を放ちます。色そのものが空間を構成する要素となり、ファッションと建築の境界を曖昧にしています。

アクネ ストゥディオズが歴史的研究所を改装したパリ新本社を開設。建築とアートが響き合う創造の拠点
Courtesy of Acne Studios

クリエイティブを支える空間の仕掛け
VIPフィッティングルームには、これまでのショーの造形から着想を得た特注シーティングが置かれ、プライベートな試着を一つの演出体験へと変えます。光あふれるカフェテリアは、研究所時代の面影を残しながらステンレスの厨房とブロンドウッドの大テーブルを備え、日常の食事を超えた文化的対話の場に。さらに、沈床式ガーデンにはラムがデザインしたベンチが配され、自然光とともに柔らかい時間が流れます。ブノワ・ラローズによるカスタム照明は館全体に柔らかい光を行き渡らせ、働く人々の創造性を静かに後押しします。


アクネ ストゥディオズが歴史的研究所を改装したパリ新本社を開設。建築とアートが響き合う創造の拠点
Courtesy of Acne Studios

アートとともに息づく本社
館内にはジョナサン・リンドン・チェイスやウィリアム・ウェグマン、ジェレミー・デラーら、過去にブランドとコラボレーションを重ねたアーティストの作品が展示されています。これらは単なる装飾ではなく、アクネ ストゥディオズの歩んできた創造の軌跡を“常設展示”として再生するもの。オフィスに居ながらにしてアートのインスピレーションを受けられる環境は、本社を一種の現代美術館のような空間へと昇華させています。

アクネ ストゥディオズが歴史的研究所を改装したパリ新本社を開設。建築とアートが響き合う創造の拠点
Courtesy of Acne Studios

歴史と未来が交差する拠点
ヨハンソンが「過去と現在の対話」と呼ぶこの建築は、Acne Studiosにとって単なるオフィスではありません。パリという国際的文化都市の中心に歴史的建造物を本社として選んだことは、都市そのものをブランドの一部と捉える姿勢の表れ。建築を纏うファッションハウスとして、未来の表現を生み出すための拠点を築いたと言えるでしょう。ここから、ファッションと建築、アートが共鳴する新たな物語が始まります。

お問い合わせ:
アクネ ストゥディオズ アオヤマ
Tel: 03-6419-7748
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