富士山麓の織物の街・山梨県富士吉田市を舞台にした“布の芸術祭”「FUJI TEXTILE WEEK 2025」が、2025年11月22日(土)から12月14日(日)まで 開催されます。旧織物工場や倉庫、商店街の建物など、街に点在する歴史的建築が展示空間として生まれ変わり、テキスタイルの文化的レイヤーを歩くような体験が今年も広がります。


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旧山叶会場/photo by ©FASHION HEADLINE
1000年以上続く織物産業の歴史を背景に、伝統と現代の創造性を結び直す試みとして2021年にスタートしたFUJI TEXTILE WEEK。第4回となる今年は、テキスタイルの“流れ”と、その下層に潜む文化や記憶に焦点を当てるテーマのもと、国内外のアーティストが富士吉田の街との対話から生まれた新作を発表します。

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
総合案内所/photo by ©FASHION HEADLINE

FUJI TEXTILE WEEKとは?──1000年の織物文化が息づく「布の芸術祭」
富士吉田は、古来より富士山の湧水に恵まれ、染色や洗浄に適した水環境が織物産業を支えてきた街です。その歴史を起点に、伝統産業・地域文化の再生を目指し、アートとテキスタイルを横断する国内唯一の芸術祭として誕生したのがFUJI TEXTILE WEEKです。

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
松本千里|Embracing Loom 展示会場:旧糸屋/photo by ©FASHION HEADLINE
特徴的なのは、廃業した工場、旧店舗、織物倉庫、元銀行など、街に点在する“産業の記憶”をそのまま展示空間として活用している点。建築物がかつて担っていた役割を残したままアートを迎え入れ、文化のレイヤーが街の中に静かに立ち上がります。

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
街のいたるところにポスターが貼られている/photo by ©FASHION HEADLINE

2025年テーマ「織り目に流れるもの」──見えるものと見えないもののあいだへ
今年のテーマ「織り目に流れるもの」は、布の表層に現れる“織り目”の下に潜む、音、手のリズム、土地の気配、記憶といった、視覚化されない力を読み解こうとするもの。地下を巡る伏流水のように、文化の深層を形づくってきた“見えない流れ”に目を向けることを促します。

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
UMPRUM|It is hot, yet there’s shade in the garden 展示会場:福源寺/photo by ©FASHION HEADLINE
アート展ディレクターは昨年に続き南條史生、キュレーターは丹原健翔が担当。2024年の準備期間を経て、アーティストと富士吉田の対話がより深まり、土地固有の文脈と結びついた作品が多く登場します。

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
安野谷 昌穂|寛厳浄土 赤・黒/photo by ©FASHION HEADLINE

作品紹介──「織り目に流れるもの」を可視化する5つの視点
相澤安嗣志|How The Wilderness Thinks
展示会場:旧山叶

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
相澤安嗣志|How The Wilderness Thinks 展示会場:旧山叶/photo by ©FASHION HEADLINE
大量のデッドストック生地が吊り下がり、染色された端部がレイヤーとなって揺らめくインスタレーション。観る者は洞窟のような布の空間を歩き、軽やかな風合いを全身で感じることになります。
その構造は、富士講信者が富士登拝前に行った「胎内巡り」を想起させ、織物の歴史が持つ精神的な層と土地の記憶を現代へと呼び戻します。


増田拓史|白い傘と、白い鳥。
展示会場:旧山叶

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
増田拓史|白い傘と、白い鳥。 展示会場:旧山叶/photo by ©FASHION HEADLINE
富士吉田で戦時中に“落下傘用の絹”が織られていた歴史から着想した映像作品。美しく嗜好性の高い布を織る技が、かつて“命を守るための布”を生んでいたという事実に着目し、映像・資料・インスタレーションによって時間の層を往復します。地上に降り立つまでの落下傘の瞬間が、街のショーウィンドウのような空間で静かに立ち上がります。


齋藤帆奈|織目に沿ったり逸れたりしながら流れる
展示会場:旧山叶

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
齋藤帆奈|織目に沿ったり逸れたりしながら流れる/photo by ©FASHION HEADLINE
織り柄の入った絹の反物の上を、粘菌が色の軌跡を描きながら移動する作品。川の流れのように“沿う”ことも“逸れる”こともある粘菌の動きは、布という表層と、生命が持つ内的リズムの交差を可視化します。


松本千里|Embracing Loom
展示会場:旧糸屋

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
松本千里|Embracing Loom 展示会場:旧糸屋photo by ©FASHION HEADLINE
かつて呉服店として賑わった座敷空間に、絞り染めの造形が増殖するように広がり、中央に置かれた古い織機を“抱きしめる”ように絡みつくインスタレーション。古い建物に蓄積された手仕事の記憶が“テキスタイルの霊”として立ち上がるような、物語性のある作品です。


柴田まお|Blue Lotus
展示会場:下吉田第一小学校プール

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
柴田まお|Blue Lotus 展示会場:下吉田第一小学校プール/photo by ©FASHION HEADLINE
水・光・映像・布が重層する大規模インスタレーション。水面に広がる青い蓮の造形が、クロマキーによって映像上では姿を変え、現実と虚像の境界を揺らします。
鑑賞者が水へ足を踏み入れたとき生まれる揺らぎが作品の一部となり、“存在すること”そのものを問い直す体験へと導きます。


A-POC ABLE ISSEY MIYAKE|TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE
展示会場:FUJIHIMURO

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE|TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE 展示会場:FUJIHIMURO/photo by ©FASHION HEADLINE
横尾忠則の絵画作品を“A Piece of Cloth”という哲学のもと、富士吉田の織物技術によって再構築した未発表の布作品5点。織りの密度や糸の重なりが絵画の運動性を再解釈し、布と身体性の新たな関係を提示します。

おすすめの巡り方──街のレイヤーを歩く
FUJI TEXTILE WEEKは、作品そのものだけでなく“街を歩く体験”も魅力の一つです。展示会場となるのは、織物工場や旧呉服店、倉庫、元銀行、商店街の空き店舗など、富士吉田の産業史を物語る建物ばかり。移動そのものが、街に重ねられた文化の地層を歩く行為となります。

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
FUJIHIMURO/photo by ©FASHION HEADLINE
たとえば、デッドストック生地のアーカイブ空間へと変貌した旧山叶を起点に、本町通りの生活文化の気配を感じながら歩みを進め、かつて銀行として建てられた建築を再活用したFabCafe Fujiへと向かうルートは、産業・日常・創造のレイヤーが緩やかにつながる富士吉田ならではの体験です。さらに、かつて歓楽街「西裏」に氷を供給していた氷室をアートギャラリーへと再生したFUJIHIMUROを訪れると、街の歴史と未来が交わる瞬間をより鮮明に味わえるでしょう。

FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
福源寺/photo by ©FASHION HEADLINE

FUJI TEXTILE WEEKの未来──布がつなぐ文化圏へ
本イベントは、織物という産業遺産の継承であると同時に、地域の未来を形づくる文化事業でもあります。アーティストの滞在制作、古い建築のリユース、ものづくりのネットワーク、クリエイティブツーリズムの芽生え──それらが立体的に絡み合い、新しい文化圏が育ちつつあります。

布は単なる素材ではなく、時間と記憶を編む媒体。その奥行きを見つめ直すFUJI TEXTILE WEEKの挑戦は、これからも続いていきます。


FUJI TEXTILE WEEK 2025開催──織りの街に流れる風景と、記憶のレイヤーをたどって
下吉田駅/photo by ©FASHION HEADLINE

【開催概要】
名称:FUJI TEXTILE WEEK 2025
会期:2025年11月22日(土)~12月14日(日)
休館日:11月25日(火)、12月1日(月)、8日(月)
時間:10:00~17:00 会場により16:00閉館(最終入場は各会場閉館30分前)
会場:[総合案内所]山梨県富士吉田市下吉田2丁目16-19
チケット料金:当日・一般 2,500円 学生 2,000円
チケット販売:
 [オンラインチケット] 公式オンラインチケットArtSticker、Peatix、アソビュー!
   [紙チケット] 総合案内所 (富士吉田市下吉田2-16-19)
                        FUJIHIMURO (富士吉田市富士見1-1-5)
                        下吉田観光案内所 (富士吉田市下吉田1-4-21)
主催:山梨県富士吉田市
企画運営:FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会

【アクセス】
東京方面から電車で
・新宿駅 - (JR中央本線100分、特急60分) - 大月駅 - (富士急行線 50分) -「下吉田駅」降車徒歩5分
・新宿駅 - (特急富士回遊 約100分) -「下吉田駅」降車徒歩5分
東京方面から高速バスで
・バスタ新宿 - (中央高速バス105分) -「中央道下吉田バス停」または「富士山駅バス停」降車徒歩15分
東京方面から車で
・東京 - (中央自動車道 90分) - 富士吉田西桂SICまたは河口湖ICより約10分
名古屋方面から電車で
・名古屋 - (新幹線100分) - 三島駅 - (高速バス90分) -「富士山駅」降車徒歩15分
名古屋方面から車で
・名古屋 - (新東名高速道路 150分) - 新御殿場IC - (東富士五湖道路25分) - 富士吉田忍野スマートICより約10分
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