寺田倉庫株式会社が主催する現代アートアウォード「TERRADA ART AWARD 2025」において、最終審査を担った5名の審査員により、ファイナリスト5組それぞれに授与される審査員賞が決定しました。受賞作家たちは、2026年1月16日(金)から2月1日(日)まで、寺田倉庫G3-6Fで開催される「TERRADA ART AWARD 2025 ファイナリスト展」にて、新作を含む作品群を発表します。


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TERRADA ART AWARDは、絵画や写真、立体、テキスタイル、映像、デジタル・メディアアート、パフォーマンス、サウンドなど、現代アート全般を対象としたアウォードです。ファイナリストには展示機会に加え、制作費支援や、副賞として協賛パートナーおよび寺田倉庫による複数のサポートが提供されます。1970年代より美術品保管事業を展開してきた寺田倉庫は、倉庫という空間を「保管」から「制作・展示」へと拡張し、天王洲を拠点にアーティストが継続的に活動できる環境づくりを進めてきました。TERRADA ART AWARDは、その取り組みの延長線上に位置づけられるアウォードであり、倉庫空間を舞台に、次代の表現が実装される場でもあります。

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
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5組の展示プランと審査員賞のポイント
本展の核は、応募時に提出した展示プランを起点に制作されてきた作品群が、倉庫空間で“実装”されること。平面・立体・サウンド・インスタレーション・映像・パフォーマンスまで、多様な媒体が同居しながら、同時代の問いを立ち上げます。

■寺瀬由紀賞:黒田大スケ(DAISUKE KURODA)
黒田大スケ氏が注目するのは、街に残る「忘れられた/無視された」存在です。丹念なリサーチとフィールドワークを通じて、歴史に埋もれかけた対象を呼び戻し、鑑賞者を“知識”ではなく“物語”で引き込む語り口を築いてきました。審査コメントでは、確かな事実を踏まえつつ、コミカルさを孕んだ独自のナラティブが評価され、同時に「歴史とは何が真実として残るのか」という根本的な問いが指摘されています。

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
ヘルメットヘッドバードいす(黒田大スケ、2025年)/photo by ©FASHION HEADLINE
今回の展示では、戦後日本の彫刻が抽象表現へ向かう黎明期において参照されたブランクーシの代表作「空間の鳥」をめぐり、彫刻家たちの“話し合い”を演じるビデオ作品を含むシリーズを発表予定。黒田自身が語る「『彫刻』とは何か?」という問いが、倉庫空間でどのように立ち上がるのかに注目です。

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彫刻家のテーブル(黒田大スケ、2025年)/photo by ©FASHION HEADLINE

■鷲田めるろ賞:小林勇輝(YUKI KOBAYASHI)
小林勇輝氏は、中国南部武術「詠春拳」を起点にした学際的パフォーマンス作品「The Wing Chun Project」を展開。
2019年以降、香港・中国・日本で鍛錬とリサーチを重ね、武術を男性性と結びつける固定観念から解き放ち、クィアの視点で“身体的コミュニケーションの術”として再解釈する試みが評価されています。

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詠春拳プロジェクト(小林勇輝、2019年-)/photo by ©FASHION HEADLINE
戦争や植民地支配の歴史、現代における「戦い/自己防衛」を学ぶ意味へと射程が広がる本プロジェクトは、アートとパフォーマンスの境界を横断しながら、身体が持つ政治性を静かに問います。

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詠春拳プロジェクト(小林勇輝、2019年-)/photo by ©FASHION HEADLINE

■神谷幸江賞:是恒さくら(SAKURA KORETSUNE)
是恒さくら氏は、人と鯨の関わりをたどりながら、過去には道具の素材として使われ、いまは生活から姿を消しつつある“素材”と“加工の技”をめぐって思考します。神谷氏のコメントでは、環境変化が緊急の課題となる時代背景の中で、各地に残る物語や技術を、表現を通じて共有し、記憶し、伝える方法を形にしようとする姿勢が強調されています。

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
空想玩具(是恒さくら、2015-2025年)/photo by ©FASHION HEADLINE
“空想の玩具”という形で、語りと技術を同時に残す——そのアプローチが、未来に向けた想像力をどうひらくのか。新作と旧作を束ねた展示構成にも注目したいところです。

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空想玩具(是恒さくら、2015-2025年)/photo by ©FASHION HEADLINE

■金島隆弘賞:谷中佑輔(YUSKE TANINAKA)
谷中佑輔氏は、身体を「実証性」や「生産性」だけで捉える枠組みに疑問を投げかけ、癒しやケアを入口に、共同体の中で身体の主体性(エイジェンシー)を組み直す可能性を探ります。審査コメントでは、最終形態が最も想像しにくい計画でありながら、その“分かりにくさ”こそが社会の見つめ方と世界観への関心を掻き立てる、と評価されています。

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
迷走の作法(谷中佑輔、2025年-)/photo by ©FASHION HEADLINE
「楽器」であり「彫刻」であり「インタラクティブ作品」でもあるという複層的構成の新作は、鑑賞者の関与によって成立する可能性を孕みます。倉庫空間で“共にある身体”がどのように共有されるのか——体験として確かめたい作品です。

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
左)CRISPR-PP2 、右)CRISPR-PP8 (谷中佑輔、2024年)
中央)時と治癒(ダイアグラムプロジェクト)(谷中佑輔、2025年)
Photo by Keizo KIOKU

■真鍋大度賞:藤田クレア(CLAIRE FUJITA)
藤田クレア氏は、スピードや効率が支配する現代において、人と人/人と自然が“共に在る”ための関係性を見つめ直します。植物が光や温度、風の変化に反応し続けるように、他者や環境に歩み寄る感覚をもう一度取り戻す——その問題意識が制作の核にあります。
真鍋大度氏のコメントでは、「時間を省けないもの」の価値、ログや数値に回収されない暗黙知、注意の速度そのものを作り替える体験としての強度が示されています。

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
Auto-Pollination (藤田クレア、2025年)/photo by ©FASHION HEADLINE
藤田氏自身も、待つことや余白の大切さを制作で再実感したと述べており、本展で立ち上がる“共存の余白”が、鑑賞者の身体感覚にどう作用するかが見どころになりそうです。

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
Reaction ~ver. Dionaea muscipula~ (藤田クレア、2025年)/photo by ©FASHION HEADLINE

WHAT CAFEで、関連イベント「2015受賞者の“いま”」をたどる
ファイナリスト展と連動し、天王洲のアートギャラリーカフェWHAT CAFEでは、「TERRADA ART AWARD 2015」で受賞・入選した作家の近作を紹介する企画展示を開催。受賞当時の作品と近作を並置し、約10年の変遷を可視化する構成も掲げられています。

WHAT CAFE EXHIBITION vol.44
From here to eternity:TERRADA ART AWARD 2015 受賞者の「いま」の展開
会期:2026年1月10日(土)~1月25日(日)

TERRADA ART AWARD 2025、審査員賞が決定──天王洲で開かれるファイナリスト展が示す、いまの表現の現在地
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審査員賞の決定はゴールではなく、むしろ「展示として実装される」ための起点です。歴史の語り直し、身体とジェンダー、環境と物語、ケアと共同体、時間と暗黙知——5組の関心はばらばらでありながら、複雑な状況を複雑なまま捉え直すという一点で共振しているようにも見えます。倉庫空間という“余白”の大きな器の中で、その実践がどんな温度で立ち上がるのか。2026年の天王洲に、いま見ておきたい表現が集まります。

【開催概要】
TERRADA ART AWARD 2025 ファイナリスト展
会期:2026年1月16日(金)~2月1日(日)※会期中無休
会場:寺田倉庫 G3-6F(東京都品川区東品川2-6-10)
開館時間:11:00~18:00(最終入館 17:30)
入場料:無料(予約不要)
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