虎ノ門ヒルズを舞台に開催中の「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」。本展は、士郎正宗による原作マンガを起点に、アニメーションとして結実してきた『攻殻機動隊』シリーズの軌跡を振り返ると同時に、テクノロジーと人間の関係性をあらためて問い直す試みです。


攻殻機動隊展 Ghost and the Shell ――...の画像はこちら >>
寺山紀彦 《「“知の遺跡” “World Tree: Ghost and the Shell”」 》
photo by ©FASHION HEADLINE

1989年に発表された『攻殻機動隊』が描いた世界は、当時は明確なSFとして受け取られていました。しかし約37年を経た現在、AIやネットワーク、記憶の外部化といった要素は、すでに私たちの日常の中に深く入り込んでいます。本展は、それらを過去のフィクションやアーカイブとしてではなく、現在進行形の問いとして立ち上げることを目的としています。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell  ――「未来」はすでに、私たちの日常の中にある
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本展のタイトルが、原作の「Ghost in the Shell」ではなく、「Ghost and the Shell」とされている点も象徴的です。統括ディレクターの桑名功氏は、その意図についてこう語ります。

士郎正宗が描いた世界で提示されていたSF的な感覚は、今や私たちの生活の中で、知らず知らずのうちに現実のものとなり始めている。そうした時代において、単に作品を楽しむ場としてではなく、『攻殻機動隊』を起点に、これから私たちはどのような未来を生きていくのかを考えてもらえる場にしたい──その思いが、本展の構想の出発点にありました。


攻殻機動隊展 Ghost and the Shell  ――「未来」はすでに、私たちの日常の中にある
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 ©1995士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT
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作中で草薙素子が抱える、「自分は人間なのか」という葛藤。その問いは、テクノロジーが日常となった現代において、私たち自身の問いへと静かに重なります。これからの時代、私たちは何に“ゴースト(精神・意識)”を感じ、何を“シェル(身体・構造)”として捉えるのか。両者を対立させるのではなく、並列して考えるという視点こそが、「Ghost and the Shell」というタイトルに込められた思想です。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell  ――「未来」はすでに、私たちの日常の中にある
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 ©1995士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT
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展示空間では、完成されたアニメーション作品だけでなく、原画や設定資料といった制作途中の“中間成果物”も数多く紹介されています。
そこには、作り手の思考や感情、身体的な反復といった“ゴースト”が濃密に宿る一方で、工程や構造、技術としての“シェル”もまた可視化されています。完成形とプロセス、その両方を往復しながら鑑賞することで、来場者自身が「Ghost」と「Shell」の関係性を問い直す構成となっています。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell  ――「未来」はすでに、私たちの日常の中にある
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本展が提示するのは、未来予測ではありません。むしろ、すでに私たちの生活の中に入り込み始めているテクノロジーや価値観を、あらためて見つめ直すための“視点”です。『攻殻機動隊』が描いてきた問いは、決して遠い未来の話ではなく、現在を生きる私たち一人ひとりの問題として立ち上がってきます。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell  ――「未来」はすでに、私たちの日常の中にある
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「Ghost and the Shell」というタイトルが示すのは、明確な答えではありません。何が人間的で、何が機械的なのか。その境界が曖昧になりつつある時代において、私たちはどのように思考し、選択し、生きていくのか。本展は、その問いを来場者に静かに手渡す場として構成されています。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell  ――「未来」はすでに、私たちの日常の中にある
《Sexy Robot_The Ghost in the Shell type 1》 空山基 2026年
©︎Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA、 ©︎Shirow Masamune / KODANSHA

©士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展Ghost and the Shell製作委員会

[開催概要]
展覧会名:攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
会期:2026年1月30日(金)~4月5日(日)
会場:TOKYO NODE GALLERY A/B/C
(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45階)
住所:東京都港区虎ノ門2-6-2

[攻殻機動隊とは]
『攻殻機動隊』は、1989年に漫画家・士郎正宗が青年誌「ヤングマガジン」の増刊「ヤングマガジン海賊版」で連載を開始したSF作品です。高度に情報化・電脳化した近未来社会を舞台に、全身義体(サイボーグ)である草薙素子をリーダーとする攻性の特殊部隊「攻殻機動隊」が、複雑化・凶悪化する犯罪に立ち向かう姿を描いています。緻密でリアルな描写に加え、サイバーパンク的な世界観や哲学的なテーマを内包し、人間とテクノロジーの融合、個人のアイデンティティとは何かといった問いを深く掘り下げてきた本作は、多くのクリエイターや表現者に大きな影響を与えてきました。
1995年には押井守監督による劇場アニメーション『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が公開され、その後も2002年:神山健治監督によるTVアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』、2013年:黄瀬和哉総監督による『攻殻機動隊 ARISE』、2017年:ハリウッド実写映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』、2020年:神山健治・荒牧伸志ダブル監督による配信アニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』、など、時代ごとに異なる解釈と表現で展開されてきました。
さらに2026年には、監督:モコちゃん、シリーズ構成・脚本:円城塔、キャラクターデザイン・総作画監督:半田修平、アニメーション制作:サイエンス SARUによる新作テレビアニメーション『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の放送も予定されています。
原作漫画を起点に、アニメーション、映画、ゲームへと広がり続ける『攻殻機動隊』は、メディアごとに異なる物語と視点を提示しながら、常に「人間とは何か」「技術と共に生きるとはどういうことか」を問い続けてきました。
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