日本酒は現在では空調設備によって通年醸造が可能だが、一般的には気温が下がる秋から春にかけて仕込みが行われている。原料となる米が秋に収穫された後、蔵は本格的な仕込みの季節を迎える。そして品質を重視する酒ほど、冬に仕込まれることが多い。
なぜ冬が選ばれてきたのか。その理由は、発酵という営みの性質と日本の酒造りの歴史にある。
朝の蔵人たち 1956年撮影(小澤酒造提供)
1. 日本酒造りにおける“仕込み”
日本酒は、米・水・酵母・麹から造られる醸造酒である。蒸した米に麹菌を繁殖させ、でんぷんを糖に変える。その糖を酵母がアルコールへと変えていく。蒸米・麹・水・酵母を合わせて発酵させる工程を「仕込み」という。
この工程の温度管理が、日本酒の香りや味わいを左右する。高温では発酵が早く進むが、雑味も出やすい。 低温では発酵はゆっくり進み、味わいは整いやすい。
冬は自然に低温環境が保たれる季節である。雑菌の繁殖も抑えられ、安定した発酵が可能になる。寒仕込みは、自然条件を活かした合理的な方法といえる。これは日本の調味料、醤油づくりや味噌づくりにも言えることである。
2. 寒造りの定着
日本酒はかつて、四季に応じた造り方が存在していた。しかし江戸時代、幕府の酒造統制により夏場の醸造が制限され、冬場中心の造りが広がった。それに加え、冬の低温環境がもたらす安定した発酵は、結果として良質な酒を生むことが分かっていった。
制度的な制限と品質面での優位性が重なり、寒造りは定着していったのである。農閑期の労働力が蔵に集まり、各地に出稼ぎの杜氏集団が生まれたのもこの時代である。
3. 澤乃井 小澤酒造
東京都青梅市にある小澤酒造は、1702年創業の酒蔵であり、日本全国で人気の日本酒 澤乃井をつくっている。東京にありながら、周囲は山に囲まれ、奥多摩の湧水を仕込み水として用いている。日本酒の大部分を占める水は、味わいを決定づける重要な要素であり、この清らかな湧水が酒質を支えている。
蔵内には数多くのタンクが並び、発酵中の酒だけでなく、熟成や貯蔵段階にある酒も見られる。時期が合えば木桶も見ることができる。小澤酒造では、繊細な発酵管理が必要な大吟醸は、1~2月の最も寒い時期に仕込むという。仕込みを始める前には神棚に手を合わせる。酒は古くから神事と結びついてきた存在であり、「御神酒」として供えられてきた。
小澤酒造では酒蔵見学も実施しており、実際の設備や工程について学ぶことができる。東京にありながら、本格的な酒造りの現場を知ることができる場所である。
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透明な日本酒の味わいの奥には、発酵の理と日本の歴史、そして冬の空気が重なっている。その深い背景があるからこそ、酒は澄んでいる。
取材協力:小澤酒造









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