イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)は3月6日、パリ中心部のカルーセル・デュ・ルーヴルにて、2026/27年秋冬コレクション「Creating, Allowing ― つくる、つくらない ―」を発表しました。

今回のコレクションが問いかけるのは、デザインにおける「つくる」という意思のあり方です。
つくり手はどこまで意図を形に落とし込むべきなのでしょうか。あるいは、あえて手を加えないことによってこそ、素材本来の美しさが現れるのではないでしょうか。今回のコレクションは、ものづくりにおける「作為」と「余白」の関係性を探る試みとなっています。

ISSEY MIYAKE、2026/27年秋冬コレクション「...の画像はこちら >>
© ISSEY MIYAKE INC.

すべてをコントロールする設計から一歩引き、素材の本質や形態をそのまま受け入れること。そして、衣服が身体にまとわれたときに立ち現れる物質性の美しさを、最小限のデザインによって引き出すこと。そこには「かたちを生み出す意思」と「つくらない意思」の微妙なバランスがあります。

会場の中央には、砕かれた鉱石を思わせる銀色の砂が敷き詰められた空間が設けられました。モデルがそこに足を踏み入れることで静寂は破られ、歩みの軌跡によって砂の表面が変化していきます。細断されたアルミ箔によって構成されたこの空間は、「もの」「人」「衣服」が関係し合う装置として機能し、意図と偶然が交差する瞬間を可視化する舞台となりました。

ISSEY MIYAKE、2026/27年秋冬コレクション「Creating, Allowing」──「つくる」と「つくらない」のあいだに立ち現れる衣服のかたち
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コレクションでは、衣服の成り立ちを再考する多様なシリーズが展開されています。

「ALLOW」は、一枚の布を筒状にして身体を通すことで自然と立体的なドレープが生まれる構造を採用しています。デザインの介入を最小限に抑え、かたちづくる行為を着る人それぞれの身体に委ねるアプローチです。
和紙混のストレッチ糸から開発された生地は、石のような質感を思わせる独特の風合いを持っています。

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偶然拾った石の静かな存在感から着想を得たニットシリーズ「FOUND STONE」は、自然の造形を衣服として再解釈する試みです。リブ、ガーター、メッシュの編み構造を組み合わせた無縫製ニットに一本の縫製を加えることで、石のような質感とフォルムを軽やかな着心地で表現しています。

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また、「HANDSOME KNIT」では、ニット素材の柔軟さに反してジャケットのように構築的な肩のフォルムを形成しています。表と裏で異なる糸を編み込む構造によって、身体に沿う柔らかさと立体的な造形を両立させています。

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「UNTITLED」では、衣服をどこまで設計すれば完成と言えるのかという問いを提示しています。仕立てられていないかのように残された一続きの布が、衣服と布の境界を曖昧にし、未完の状態の中に美しさを見出そうとする試みです。

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手作業によるねじりを加えたプリーツが印象的な「WRING PLEATS」は、機械的なプリーツと手仕事のニュアンスを重ねることで、生地のうねりを強調したダイナミックな表情を生み出しています。

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「CORRELATION」では、一枚の布の原型を残すコートと円環状の構造によるボリュームスカートを組み合わせ、対照的な造形の共存から新しい関係性を導き出しています。

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さらに「CALLIGRAPH」は、一枚の布が身体を包み込みながら曲線を描くように構成されたシリーズです。衣服を“つくる”というよりも、一本の大胆な曲線を身にまとうような造形アプローチが特徴です。

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そして「URUSHI BODY」では、帯やビスチェの概念を発展させ、身体の曲線を縁取る硬質なフォルムを提案しています。
越前の和紙と京都の漆職人の技術を組み合わせることで、伝統工芸と現代技術の融合を実現しています。

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また、シューズブランドCAMPERとの協働によるシューズ「Anna」も発表されました。柔らかなストレッチニットのアッパーと彫刻的なアウトソールを組み合わせ、「靴下を履くような靴」という発想から身体性をテーマにした新たなフットウェアを提示しています。

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「つくる」ことと、「つくらない」こと。
そのあいだに広がる未確定の領域にこそ、無限の可能性が潜んでいます。

ISSEY MIYAKEの2026/27年秋冬コレクションは、衣服を完成された造形として提示するのではなく、素材、身体、空間が関係し合うことで立ち上がる「かたち」の可能性を静かに問いかけるコレクションとなりました。

ISSEY MIYAKE、2026/27年秋冬コレクション「Creating, Allowing」──「つくる」と「つくらない」のあいだに立ち現れる衣服のかたち
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