神奈川県川崎市を拠点とするブランド「LAST NEST(ラストネスト)」は、ブランド初となるランウェイショーを開催し、最新コレクションを発表しました。これまで培ってきた表現を、ひとつのかたちとして提示する節目となるショーです。


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Courtesy of LAST NEST
コレクションのタイトルは「Unformed」。その言葉が示す通り、本作の中心にあるのは“未完成であること”を肯定する姿勢です。完成へと向かう過程にある揺らぎや余白をあえて残し、それ自体をひとつの美として引き受ける——そうした意思が、コレクション全体を通して一貫していました。

“未完成”を引き受ける強さ──LAST NESTが初のランウェイで提示した、揺らぎの美学
Courtesy of LAST NEST
会場には、静かな緊張感とともに、どこか儀式性を帯びた空気が漂います。ステージ上には複数のキャンドルが灯され、その揺らぐ光の中をモデルたちが歩く。黒を基調としたルックが赤いランウェイの上に浮かび上がる様子は、服をまとう行為そのものをひとつの通過儀礼のように感じさせました。

“未完成”を引き受ける強さ──LAST NESTが初のランウェイで提示した、揺らぎの美学
Courtesy of LAST NEST
ショーは音によっても構成されています。コーラス隊の重なり合う声と、バイオリンの繊細な旋律が空間に広がり、視覚だけでなく感覚全体に作用する演出となっていました。さらにフィナーレでは、Eric.B.Jrによるライブパフォーマンスが披露され、ショーはひとつの高まりの中で締めくくられます。

“未完成”を引き受ける強さ──LAST NESTが初のランウェイで提示した、揺らぎの美学
Courtesy of LAST NEST
デザインには、あえて断ち切られた裾や袖口、安全ピンで繋ぎ留められた構造、わずかに歪みを残したコーティングやスタッズなど、未完成の輪郭を示すディテールが散りばめられていました。それらの多くはチームの手作業によるものであり、均一ではない質感が服に生々しい強度を与えています。
“未完成”を引き受ける強さ──LAST NESTが初のランウェイで提示した、揺らぎの美学

Courtesy of LAST NEST
一方で、スエードコートやムートンジャケット、端正なスーツジャケットといったアイテムには、確かな仕立ての美しさが宿ります。
細身のレザートラウザーや洗練されたフォルムのシューズは、ラグジュアリーの文脈を内包しながらも、その均衡をわずかに崩すことで独自のバランスを生み出していました。

“未完成”を引き受ける強さ──LAST NESTが初のランウェイで提示した、揺らぎの美学
Courtesy of LAST NEST
ストリートウェアとラグジュアリーの交差は、いまや珍しいものではありません。しかしLAST NESTが提示するのは、その融合そのものではなく、その“過程”に宿る不安定さや曖昧さです。整いきらない状態の中にこそ、確かな個性と意志が現れる——その視点が、本コレクションの核となっています。

“未完成”を引き受ける強さ──LAST NESTが初のランウェイで提示した、揺らぎの美学
Courtesy of LAST NEST
ショーを終えた後、デザイナーの岩瀬正明は「まだ未完成な部分は多い」と語りました。その言葉からは、未完成であることを恐れず、むしろ受け入れているような姿勢が印象に残ります。

“未完成”を引き受ける強さ──LAST NESTが初のランウェイで提示した、揺らぎの美学
Courtesy of LAST NEST
ファッションが成熟し、完成度の高さが前提とされる現代において、“未完成”をあえて引き受けるという選択。それは、強さの別のかたちを示すものかもしれません。LAST NESTのランウェイは、ブランドの新たな段階を示すと同時に、日本のファッションシーンにおける新しい輪郭を静かに浮かび上がらせていました。
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