2025年11月8日(土) 神奈川県藤沢市鵠沼海岸で開催されたジャムセッション型サーフイベント “THE TRUE DESTINATION”。
順位ではなく 「心が動いたか」 を基準に勝者が決まる前例のない大会は、参加した若いサーファーたちに全く新しい体験をもたらした。
このイベントを企画したのはDESTINATION SURF。ブランドとライダーが一体となり、ミーティングを何度も重ねながら “サーフィン本来の自由やスタイル、情熱が可視化される場” をつくりたいという強い思いから誕生した。
従来のコンテストとはまったく異なる空気感は、参加者・観客・ジャッジの心を揺さぶり、新しいサーフイベントの可能性を示す一日となった。
コンペもフリーも超える新しいサーフイベントへ
イベント名 “THE TRUE DESTINATION” の直訳は「真の目的地」。
しかしその意味はもっと深く、サーフトリップも、サーフィンそのものも、そして人生そのものも——
それぞれが自分の“目的地”を探す旅であってほしい。そんな願いが、この名前には込められている。
DESTINATION SURFは、単にサーフギアを届けるブランドではない。“サーフシーンそのものを育てたい” という大きな使命を掲げている。そのための第一歩として、「ブランドの思想を発信するイベントを、自分たちの手でつくりたい」という思いは以前からあった。
そのきっかけの一つが、サーフカルチャーが根付く海外の光景だ。
コンペティターもフリーサーファーも垣根なく混ざり合い、互いのスタイルを認め合いながら純粋に波を楽しむ姿に、 強く心を動かされた。
“日本でも、こんなサーフシーンを作りたい。”
その願いこそが、今大会の根底にある。
そして誕生したのが、数字では測れない “心が揺さぶられる瞬間” を評価するイベントという、まったく新しいコンセプト。
コンペでもなく、ただのフリーサーフでもない。
両者の魅力が融け合った “THE TRUE DESTINATION” は、DESTINATION SURFが本当に伝えたい「サーフィンが持つ本質的な価値」 を形にした場となった。
THE TRUE DESTINATION 独自のルール
—競技としてのサーフィンではなく、“本来のサーフィン”を可視化するために
DESTINATION SURFが目指したのは、「競技だけに偏らない、本来のサーフィンそのものが輝く場所」 をつくることだった。
コンペにはコンペの素晴らしさがある。しかしサーフィンは、本来もっと自由で、驚くほど無邪気で、波との対話の中で心が震える瞬間が訪れるものだ。
“ときには数字で測れないものこそ、本当の価値がある。”
この考えが、今回の大会の根幹となった。
そこで採用したのが、「心が動いたかどうか」 を基準に勝者を決める、従来のスコアリングとはまったく異なるジャッジ方式。
これを言語化しルールとして成立させるには、 “感情が動く瞬間とは何か” “どのようなライディングに魂が宿るのか”を、深く掘り下げる必要があった。
今回のルール作りで何より大きかったのは、DESTINATION SURFに所属するライダーそれぞれが持つ多様なバックグラウンドが、議論の厚みを生んだことだ。
世界を舞台に戦うコンペティター、波の魅力を追い続けるフリーサーファー、海と命がけで向き合うビッグウェイバー。
それぞれのフィールドでサーフィンを体現してきたライダーたちは、「サーフィンの価値はひとつではない」という共通認識を持っている。
その多様な視点から寄せられた意見や感覚が、今回のイベントに欠かせない“幅”と“奥行き”を生み、 数字では語れないサーフィンの価値をどう評価するかという、最も難しい議題の答えを導くヒントになった。
・競技の精度や勝負の駆け引き
・フリーサーフィンに宿る遊び心やスタイル
・ビッグウェイブに挑む姿勢や哲学
それぞれの要素がミックスされることで、 “THE TRUE DESTINATION” の独自ルール が完成した。大会ルール
—“自由 × 本気” が同時に存在するジャムセッション形式
“THE TRUE DESTINATION” のルールは、従来のコンテストとは大きく異なる。
波への向き合い方、個々のスタイル、そしてその瞬間に宿る感情——
サーフィン本来の魅力を最大限引き出すために設計された特別なフォーマット だ。
今回の大会は、日頃のフリーサーフィンに限りなく近い“ジャムセッション形式”。
カテゴリー分けは一切なく、ショート・ロング・フィッシュ・フィンレスなどボードタイプの違いによるハンデはゼロ。完全なる“合同セッション”として行われた。
予選は全5グループ、各グループ6名。同じグループで 2ラウンド 実施されるため、全員に 2回のチャンス が与えられる仕組みになっている。
さらに、本大会の象徴でもあるのが「心が動いたかどうか」 を基準にジャッジする評価方式だ。
プライオリティ制度は採用せず、 “自分らしいサーフィン” を大切にするスタイル。
インターフェアライドは評価対象外だが、波を分かち合う シェアライドは評価対象。
さらに、コンテスト中は ノーリーシュOK。自由度を最大まで高め、選手一人ひとりが持つスタイルや遊び心を引き出すための工夫が随所に散りばめられている。
そして最後に、最も大切なルールがある。通常の波乗りルールを守ること。その上で、 “自分らしいフリーサーフィン” を全力で見せてもらうこと。
このシンプルだが奥深いルールこそ、THE TRUE DESTINATION が掲げる
“本来のサーフィンの価値を取り戻す” というテーマを象徴している。
“心で戦う大会”が当日に描いたもの
—数字では語れない“熱”がそこにあった
こうして精密に設計された “THE TRUE DESTINATION” のルールは、単なる大会フォーマットではなく、選手一人ひとりが “自分らしさ” を解放するための土台 となった。
そして迎えた当日。そのルールがどんな景色を生み出すのか——そこには想像を超える “自由” と “熱” が広がっていた。
鵠沼海岸の海には、多様なバックグラウンドを持つ若いサーファーたちが集まった。
参加条件はシンプル。20歳まで、ボードは何でもOK。
ショート、ロング、フィッシュ、フィンレス。途中でボードを乗り換えて挑む選手もいれば、普段コンテストとは無縁のサーファー、スケーター、スノーボーダーも混ざる。
同じ波に乗りながら互いのスタイルを尊重し合い、ときにシェアライドで魅せる。その自由な空気感は、まさに “本来のサーフィン” を形にした時間だった。
“感情で伝えるジャッジ”という、この大会ならではの瞬間
そして、この大会を象徴するシーンが訪れる。
「なぜ勝ったのか」「どこが良かったのか」
その理由を、ジャッジが直接選手へ伝える時間だ。
ヘッドジャッジを務めたのは小林直海 と 脇田泰地。
さらに、田岡なつみ、田中英義、田沼亮、塚本将也といったDESTINATION SURFを代表する豪華ライダー陣がジャッジを担当した。
彼らが口にする言葉は、どれも濁りのない“本気”そのものだ。
「あの一発目のターン、心が動いた」
「その波への向き合い方が熱かった」
数字では表せない“熱”がそのまま評価となり、 いつも大会で勝ち上がる選手も、普段は名前が呼ばれない選手も、 “感情のスコア” によって新たな才能が浮かび上がっていった。
今回特徴的だったのは、サーフィンの多様性をそのまま評価するためにカテゴリーを多く設けたこと。
単に総合優勝を決めるだけでなく、“それぞれの個性そのものを讃える” ための賞が並んだ。
総合優勝
ベストスタイル(担当:小林直海)
ベストパフォーマー(担当:塚本将也)
ベストフィーメール(担当:田岡なつみ)
ベストノーズライド(担当:田岡亮)
ベストマニューバー(担当:田中英義)
ベストエアー(担当:脇田泰地)
※担当ジャッジは、そのカテゴリーの入賞者を最も的確に評価できるライダーが務めた。
カテゴリーを細かく分けたことで、「サーフィンはひとつの価値観では評価しきれない」という大会の思想がより強く表れ、選手たちの努力や表現が多面的に光る結果となった。
“心が揺さぶられる瞬間” を大切にしてきた小林直海、脇田泰地、そしてDESTINATION SURFが共有する今までとは違う新しい感覚。その感覚がジャッジの核となり、会場にいた誰もが「サーフィンって、こんなにも人を動かすんだ」と再認識する一日となった。
海・ブランド・サーファーが循環する未来へ
人々が海を大切にする。
地球が波を生み出してくれる。
サーファーはブランドのギアを手にする。
ブランドはイベントをつくり、コミュニティを育てる。
“海・ブランド・サーファー” の循環 が広がれば、サーフシーンはもっと豊かに、そして持続的に育っていく。
今回の成功を経て、THE TRUE DESTINATION 第2回の企画はすでに動き始めているそうだ。
これは、ただのコンテストではない。
“サーフィンの本質”を取り戻し、若い世代の感性や情熱がまっすぐに輝く場所をつくる挑戦。
THE TRUE DESTINATION は、これからの日本のサーフシーンに新しい指標と価値観を提示するムーブメント となっていくだろう。
結果
総合優勝:奥村 太陽
BEST FEMALE:大塚海音
BEST PERFORMER:石塚 夏偉
BEST MANEUVER:髙井 汰朗
BEST NOSERIDE:奥村 太陽
BEST AIR:髙井 汰朗
BEST STYLE:徳田 凱
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