ヨッシーこと吉岡進がルアー釣りを中心に色いろな釣り物を狙い、毎回釣りの楽しさを伝えていく「Enjoy Every Fishing(略してE2F)」。

第8回はジギングとテンヤで狙う相模湾のタチウオ。



ヨッシーも当地のタチウオ釣りは初挑戦となる。

釣れるタチウオは目下のところ指幅2.5~4本級を主体にトップ20~30本前後、新しい群れが入ってくると指幅5~7本級の大型も交じるという。

10月下旬に釣行したのは相模湾平塚港の庄治郎丸。

タチウオ船はテンビン仕掛けのエサ釣りやテンヤタチウオ、ルアー釣りのジギングなど自由に楽しむことができる。

相模湾のタチウオの画像はこちら >>

テンビンとテンヤの2タックル持参し、両方の釣りを試しながら釣る方が多い

Profile

◆よしおか すすむ

1982年生まれ。ヨッシーの愛称で親しまれている。

一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。

ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。

相模湾のタチウオ
釣行の写真

大堀耕史船長が向かったのは港から10分ほどの相模川河口前で、水深75~100m前後。

タナは底付近から宙層まで幅広いが、その都度反応が濃く出ている範囲をアナウンスしてくれる。

ヨッシーはジギングから始めると、フォールのアタリをとらえてロッドを曲げて、指幅3本級を取り込んだ。

続いてテンヤタックルに持ち替えるとアベレージサイズのタチウオを立て続けに上げ、さらに指幅4本級も釣り上げてサイズアップに成功。

その後もヒットパターンをつかみ、タチウオを連発するヨッシー。

相模湾のタチウオ
釣行の写真

テンヤ釣法を中心に相模湾のタチウオを楽しんだ

Enjoy Every Fishing Tackle & Lure guide

ヨッシーのタチウオタックル

ジギング用はジグがあまり飛び跳ねないよう、できるだけしなやかな「アンチョビ ドライバー エクストロADX-66L」をチョイス。

テンヤ用は8:2調子のテンヤ専用「プライザ タチウオPRT-175MH82」。

タチウオを掛けるとベリーからバットまでスムースに曲がり、テンションが抜けにくくバラシを軽減する。

相模湾のタチウオ
仕掛けの図

相模湾のタチウオ
ルアーの写真

相模湾のタチウオ
釣行の写真

相模湾のタチウオは素直に食ってきてアタリも明確に出る。テンヤで20本のタチウオをキャッチ

How to attach fishing bait

相模湾のタチウオ
エサ巻きの手順の写真

エサ巻きの手順

「水深は100mです。反応は80~90mあたりに出てますよ」

相模湾平塚港・庄治郎丸の大堀耕史船長のアナウンスが飛ぶ。

船が港を離れてから、わずか10分足らず。

陸地が間近に見えるのに、急に深くなるのが相模湾の特徴だ。

「ひゃ、ひゃく!」

E2F取材班が悲鳴を上げる。

イチロウこと鹿島一郎さん、トモキこと板倉友基さん、そしてライターのタカハシゴーは、手巻きリールを使っているのだ。

150g前後のジグを、落とすのはいい。

やることと言えば、親指で両軸リールのスプールを軽く押さえてサミングするぐらいだ。

あとはボーッとしていても、ジグが勝手に海底目がけてまっしぐらに突き進んでくれる。

指示ダナをジグが通過するあたりでは、緊張感が増す。



タチウオはフォールするジグにアタックしてくるから気を抜けない。

シャクったりフォールさせたりという誘いも苦にはならない。

「タチウオこい!」「食え!」という期待感いっぱいだから、多少の重みなど何も問題ない。

だが、回収はツラい。

「はい、上げてくださ~い」という大堀船長のアナウンスに応じ、文字どおりに回収するだけだ。

リールを巻く、巻く、巻く。

それしかない。

ごくまれに回収中に青物がヒットすることもあるが、そうそう起こらない。

ただジグを手元に引き寄せるだけ。

リールを巻くだけだ。

タカハシゴーが使用していたリールは、シマノ・オシアカルカッタ300HG。

最大巻き上げ長は81cmである。


100mのPEラインを巻き取るためには、約120回もクルクルクルクルしなければならないのである。

いや、リールを巻く行為だって楽しい。

釣り人ならだれだって家でなんの気なしにリールをクルクルすることがあるだろう。

だが、10月30日の庄治郎丸・6号船の船上において、回収のためだけにリールを巻くのはちょっとツラかった。

なぜなら、E2F取材班の中にただ一人、電動リールを使っている男がいたからだ。

みんなが手巻きなら平等だ。

しかし一人だけ電動リールが交じると、急にネタミソネミヒガミの感情が沸き起こる。

涼しげな顔でキュイーンと電動リールを操作している男の名は、ヨッシー。

当コーナーの主役、吉岡進その人である。

相模湾のタチウオ
釣り場の写真

当日のタチウオ船は2隻出しと盛況

ポイントは港近くながら水深100mと深い

船宿で禁じられていない限り、電動リールを使うも使わないも、個人の自由だ。

ヨッシーが電動リールを使ったって、なんら問題はない。

しかし、開始早々電動リールに手をかけたヨッシーの姿に、なんとなく釈然としないE2F取材班の面々である。

「プロは黙って手で巻いてこそプロだろうがよ……」

「プロだからこそ手巻きだよ」

「プロってのはよぅ……」

イチロウ、トモキ、タカハシゴーの3名がボヤく。



しかし、ことタチウオ釣りに関しては、電動リールのほうが釣果を上げることもままある。

庄治郎丸のタチウオ船は、テンビン、テンヤ、そしてジギングのすべてがOKというフリースタイルである。

E2F取材班を除く7名のお客さんは、テンビンとテンヤを思い思いに使い分けながら、フツーに電動リールを使用している。

逆に、手巻きリールに固執しているのはE2Fの3名ぐらいのものである。

大堀船長によると、相模湾のタチウオ釣りは20年以上前に一時的に大フィーバーしたことがあるが、本格的な釣り物として定着し、専門船を出すようになったのは3年ほど前のこと。

東京湾に比べると深場が中心だが、時期によっては浅場に群れが集まることもあるし、大型が交じることもある。

地理的に相模湾のほうが行きやすいお客さんを中心に、隠れた人気釣り物となっている。

この日も20名近くのお客さんを集め、2隻出しの盛況だった。

タチウオ釣りの名手として全国津々浦々で釣りまくっているヨッシーも、相模湾のタチウオと向き合うのは初めてだ。

「どんな釣りになるんだろうね」と、朝イチはジギングから開始。

「幅広いタナを素早く探れるし、魚の活性も分かる。ま、タチウオのヤル気チェックだね」とヨッシー。


6時25分の釣り開始から20分ほどで「食ったよ!」と叫んだ。

ヨッシー初の相模湾タチウオである。

「スローなワンピッチジャークで食わなかったからフォール主体のアクションに変えたらドスン!かわいめサイズだったけど、ヒットした瞬間のドスンはたまらないものがあるよね」

この成果をもってジギングを続けるのかと思いきや、なんとヨッシーは電動リールがセットされたジャッカルのテンヤタチウオ専用ロッド、プライザタチウオを手にしたのである。

「テンビンやテンヤで釣っている人たちに比べると、ジグへの反応が思いのほかよくなかったんだ。

やっぱりある程度は数を釣らないと、相模湾タチウオの傾向と対策も分からないしさ」

プロフェッショナルとしての選択であることを強調するヨッシー。

手巻きから電動リールへの変更は、なんとなく引け目を感じるものなのだ。

……こだわる必要はまったくないのだが、なんとなく……。

相模湾のタチウオ
釣行の写真

相模湾の初タチウオはジギングで釣り上げた

ジギングからテンヤにチェンジ 入れ食い王・ヨッシー爆誕

しかし、電動リール+テンヤに替えてからのヨッシーは凄まじかった。

ヨッシーなりに試行錯誤を重ね、この日の結論に達してからは、まさに竿とリールが火を噴く勢いで釣りまくったのである。

もはやタカハシゴーのメモでは、フォローしきれなかった。

ほかが沈黙している場面でも、一人でバッタバッタとタチウオを釣りまくるヨッシー。

本来であれば鬼気迫るシーンでもおかしくないはずだが、巻きは電動リールのデッドスローに任せ、ときに釣り座に腰かけたまま小さく竿を動かすヨッシーの姿からは、迫力というものが感じられなかった。

だが、本当に強かった。



船長いわく「まあまあシブかったですね」と振り返るこの日、独り勝ちと言ってもいいほどの釣れっぷりで、20本の釣果をもって相模湾タチウオを完全制覇したのである。

「船長の指示ダナどおりにテンヤを落として、早めの動きからストップ&ゴーしてみたけど、全然アタらなかったんだ。今日の正解は、デッドスローで巻き上げ続けながらのバイブレーション釣法だね。E2F取材班のみんなやほかのお客さんの様子を見てると、バラシが多かった。たぶんアタリの数自体はおれもほかのみんなも変わらなかったと思うけど、おれは取りこぼしが少なかったんだよね」

つまりヨッシーは、ラクチンだから電動リールを選んだのではない。

より多くの釣果を狙っての戦略だったのである。

「デッドスローで巻き上げながらたたき続けるのは人間にはなかなか難しいけど、電動リールなら簡単だからね。深いから電動リールってわけじゃないんだよ。釣りの幅を広げてその日の状況に応じるための電動リールって感じかな。はっはっはっ」

余裕の笑みである。

ぼやきまくっていたE2F取材班の手巻きリール組は、「男は黙ってリール巻く」的な妙なこだわりに負け、釣果を逃してしまったのだ。

……と言いつつ、彼らも彼らなりに頑張っていた。

トモキ、イチロウ、タカハシゴーともに6~7本の相模湾タチウオを手にしていたのだ。

ヨッシーの半分以下とはいえ、初の相模湾タチウオと思えばまずまずの釣果である。

相模湾のタチウオ
釣行の写真

指幅2.5~3本級のタチウオがメイン

相模湾のタチウオが持つ独特のクセとは何?

乗船前は「今日はジグで通しますよ!」とキッパリ言い切っていたトモキだが、アタリの多いテンヤの魔力にすぐに負け、宗旨変えしていた。

そして手巻きテンヤながら、ヨッシーとまったく同じことを感じていた。

「ジグはパターンが見つけられず、モヤモヤしてたんです。でもテンヤはタナと動きさえ合っていればアタリは出た。だからテンヤにスイッチです(笑)」とトモキ。

イチロウは、「空回りしちゃいましたね……」とシブい表情を浮かべる。

「テンヤに食ってくる時間帯に、うまく乗せられなかった。アタリは出てたんですけどね~。ヨッシーやトモキの話を聞くと、テンヤを止めていたからかもしれない。水深が深かったから、合わせも決まらなかったのかなぁ……」

その言葉を受けて、ヨッシーが説明する。

「今回攻めた80~90m前後の深さなら、合わせが決まらないことはないと思う。イチロウさんはパワフルな合わせをするしね。それより、タチウオが変な角度でテンヤを食ってきてたような気もするんだ。タチウオって地域によってキャラクターがだいぶ変わる魚なんだけど、相模湾のタチウオにも独特のクセがあった。ジギングでも「ここで食ってくるだろう」という場面で口を使わなかったり、止めを作るとバラシが多くなったりね……。でもこういう地域性を見つけるのがタチウオ釣りの面白さ。関東圏の人なら、東京湾だけじゃなくて今回の相模湾とか、色んな海域のタチウオを攻略するのも楽しいと思うよ」

そんな中、相模湾タチウオの魚影自体は濃そうだという手応えを、ヨッシーは感じた。

「今日はちょっとシブめだったけど、それでもテンヤで20本釣ってるからね。活性が高いときなんかはジグが落ちないんじゃないかな(笑)」

特筆すべきは、永遠の初心者であり意固地のカタマリでもあるタカハシゴーが、だれよりも長くジギングを続け、3本ほどタチウオを釣ったことだ。

最終的にはテンヤの魔力に負けて4本を追加したタカハシゴーだったが、決して上手ではない彼がジギングとテンヤでそこそこの釣果を出したということは、相模湾タチウオのポテンシャルの高さを示している。

「色んな海域で色んなクセのあるタチウオを釣ることは、自分の引き出しを増やすことでもある。今日も勉強になったよ」

電動リールとともに颯爽と去って行くヨッシーなのだった。

相模湾のタチウオ
釣行の写真

食いが立つとジグでもテンヤでもこのとおり。トリプルヒットを達成

相模湾のタチウオ
釣行の写真

大中小サイズのイワシを持ち込んで色いろ試してみたが当日は大きなエサのほうが食いがよかった。テンヤは50号を使用

相模湾のタチウオ
釣行の写真

やけにお腹がプックリしてると思ったらカマスが丸ごと入っていた

ジギングの釣り方 ワンピッチジャーク

まずはアタリを出すためにアナウンスされる指示ダナを中心に上下5mの範囲をワンピッチジャークで探る。

アタリが出るタナが分かったら、フォールを織り交ぜて集中的に探っていく。

相模湾のタチウオ
釣行の写真

テンヤの釣り方 ショートピッチジャーク&バイブレーション釣法

ショートピッチジャーク&バイブレーション釣法

テンヤタチウオで反応がよかったのが前半はハンドル8分の1回転で1シャクリするショートピッチジャーク、後半は「巻き速度4」の電動デッドスロー巻きでのバイブレーション釣法。

相模湾のタチウオ
釣行の写真

船宿インフォメーション

相模湾平塚港 庄治郎丸

0463・21・1312

庄治郎丸のタチウオ船はテンビン、テンヤ、ジギングが同船して楽しめるだけでなく、ジギングからテンヤなど途中で釣り方を変更してもOKなので色いろな釣法を試すことができる。

タチウオ船は3年前にポイントを開拓してからスタート。

東京湾や駿河湾へ行かずにタチウオ釣りが楽しめるため、とくに地元の釣り客に人気がある。

▼備考=予約乗合、6時半時出船。アマダイ、ライト五目へも出船

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隔週刊つり情報(2023年12月1号)※無断複製・転載禁止

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