レビュー

どうすれば成功を収め、幸福になれるのか。誰もが知りたいであろう、この究極の問いの答えは未解明なのだという。

ただし、拍子抜けする必要はない。何が人々の成功や幸福を遠ざけるのかを知り、先手を打っておくことは可能だ。その際に役立つのが、認知心理学や行動経済学などの学術研究から導き出した52の思考法である。この思考法をまとめた本書は、スイスの知の巨人であり、日本でもベストセラーとなった『Think clearly』著者による、待望の新刊だ。
思考の罠は、さまざまな形で私たちのもとに忍び寄ってくる。たとえば、やるべきことを先延ばしにし、土壇場で焦ってしまう。「この商品をお得に買える最後のチャンス」という言葉につられて、ほしくもないものを購入する。仕事の計画を立てても、その通りに進まない――。要約者は何度耳が痛かったことか。
人類の進化の過程で構築されてきた思考・行動パターンを正せるようになるには、時間がかかるだろう。だが、思考の誤りを学べば、大事な意思決定で「すべきでないこと」を排除でき、失敗の数をいまよりも確実に減らせる。それが人生の向上につながるという希望を見出すことができた。

アリストテレスは、「賢人がめざすべきは、幸福を手に入れることではなく、不幸を避けることだ」という格言を残している。その意味をかみしめながら、要約では52の思考法の一部を紹介している。これらは人生という航海において賢く船を進めるための「思考の礎」となってくれるはずだ。新年の抱負をたてたものの、実現できるか心もとない方には必読の内容といえる。

本書の要点

・大事なことを「先延ばし」しないようにするには、リラックスする時間を設けること、注意が逸れる原因となるものをあらかじめ排除しておくこと、そして期限を設定することが効果的だ。
・私たちは、ほかの人も自分と同じように考えると思いこんでしまう。これを防ぐには、自分自身に対して懐疑的になることが重要となる。
・フラッシュバルブ記憶のように、非常に鮮明に感じられる記憶でさえ、半分は間違いだといえる。
・「最後のチャンス」と聞くと、私たちは分別をなくす。大事な決断の前には「思考の罠」にはまっていないか熟慮が必要だ。



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