レビュー

日本経済は長らく停滞しており、世界的な地位が低下している――このような論考を目にする機会が最近増えている。最近は「日本は凄い」と自賛するテレビ番組が数え切れないほど放送されているが、それも日本人が自信を喪失した裏返しと言えるだろう。

本書でも指摘されているとおり、企業が生き残るために労働者の賃金上昇を犠牲にした結果、貧困が増え、格差は広がった。そして社会保障システムの崩壊により、将来への不安を抱え、希望を持てない人が増えている。それが現代の日本だ。これまで拡大、成長してきた経済が、衰退のフェーズに入りつつあるということが、目に見えて実感できるようになってきている。
人口減少の時代において、いままでと同じやり方を続けても経済成長は難しい。だが経済成長なくして、税収増や増税は見込めない。このままでは福祉もインフラ維持もままならぬまま、高齢化・過疎化した地方から、日本社会は崩壊してしまう。そうした不安に対して、本書は地方に豊かに存在している山水の恵みこそ、日本に希望をもたらすと提起している。
日本列島の長い歴史から見れば、平野部や都市に人が多く住むようになったのは最近のことであり、昔から日本人は里山に住み続けてきた。近代的な成長モデルからの脱却が迫られている現代において、本書が紡ぐような新しい社会の物語が必要とされている、そう予感させてくれる一冊である。

本書の要点

・土建国家モデルはインフラ整備だけでなく、社会保障としての機能を持っていた。ゆえに土建国家モデルの崩壊は、そのまま社会保障の崩壊を意味している。


・里山には共同体の絆、豊かな山野河海の恵みがあり、震災時にはセーフティネットとして機能した。日本列島の山水郷にこそ、究極のセーフティネットがある。
・近年、都会から山水郷に移住する若者や、研究拠点や本社機能を移転させる企業が増えている。地方で暮らし、働くことはかえって合理的と考えるからだ。
・中央で立身出世するという物語とは違う、新しい社会の物語がいま必要とされている。



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