レビュー

「中小企業が多すぎるから、日本は労働生産性が低いのだ」。誤解を恐れずに言えば、これこそが本書のキーメッセージである。

かなり辛辣に思えるのだが、この主張にはしっかりとした裏付けがある。たとえば、あるデータによれば、日本企業の平均規模はアメリカの半分にも満たない。製造業を除けば、たったの27%のサイズである。アメリカは世界有数の高生産性国家であるが、この産業構造の違いこそが国全体の生産性の明暗を分けている。
現在の日本社会に見られる年功序列、終身雇用などの制度は、人口が増えていた高度経済成長の名残でしかない。高齢化と人口減少の前では崩れつつある。このような感覚を持たれている方は多いだろう。本書ではその「なんとなく、日本このままだとやばいよね」という危機感が、さまざまなデータとともに巧みに言語化されている。
中小企業で働いている人にこそ、この本を読んでいただきたい。日本の企業数に占める大企業の割合はたったの0.3%だ。日本人のほとんどが中小企業に勤めていることを考えると、本書で披露されるデータとロジックは不都合な真実となるかもしれない。だが、給料が上がらず、女性活躍が進まないままで、格差が拡がり、少子化が加速化する日本の問題の真髄を確実に突いている。
感情は一旦脇に置いて、隅々まで目を背けずにご覧いただきたい。なお、著者のデービッド・アトキンソン氏は菅首相のブレーンと言われており、スガノミクスの目玉である「中小企業再編」は本書がベースとなっていることを申し添えておく。

本書の要点

・労働人口が減っていく中、日本は労働生産性を上げなくては今の経済規模を維持できない。
・労働生産性の低い国々には、「中小企業で働く人の割合が高い」という共通点がある。
・中小企業は雇用を生むため、人口が増えている局面においては大きな役割を担っていた。しかし、人口減少局面においては、規模の小ささに由来する生産性の低さがかえって経済全体の足を引っ張ってしまう。
・現在の中小企業優遇策をやめる。規模ではなく投資行動に対してインセンティブを設け、企業の成長を促すための政策にシフトすべきである。



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