レビュー
本書は、コリン・パウエル元国務長官が自身の経験談から導き出した仕事術と人生論をまとめあげた、世界的ロングセラーを文庫化したものだ。菅義偉総理の愛読書として、いま注目を集めている一冊である。
経験談とひと口に言っても、その重さが違う。何しろ、35年間の陸軍で異例の出世を遂げ、米陸軍総軍司令官、国家安全保障問題担当大統領補佐官などの数々の重職をこなし、ブッシュ政権時代には国務長官を務めた真のリーダーたる人物である。しかしパウエル氏には、えらぶったところや、上から物をいうようなところがまったくない。ありがちな手柄話や自慢話もない。本書の原題は『It Worked For Me』、つまり「私はこれでうまくいった」である。このタイトルからは「いつ何時、誰にでもあてはまるルールではないが、少なくとも私はこれでうまくいった」というメッセージが伝わり、パウエル氏の謙虚で実直な人柄をうかがい知ることができる。この姿勢こそが、アメリカという大国の要職を務めるリーダーとしての素質なのかもしれない。
米国務長官を務めた人物の経験談には、リーダーシップやマネジメントの要諦が詰まっている。それでいて、堅苦しい表現はなく、気軽に読める。パウエル氏の様々な逸話やエピソードは、読み物としても実に面白い。読者は読み進めるにつれ自分の働き方や生き方についておのずと振り返ることになるだろう。すべてのビジネスパーソンにとって得るところの大きい一冊だ。
本書の要点
・怒りや恐怖に自分をコントロールさせてはいけない。楽観的な姿勢を保つことで、大抵の問題は解決に向かう。
・どんなときも的確に状況を判断できるよう、常に冷静沈着でいることが重要である。
・よい組織の土台には信頼関係がある。まず部下を信頼すれば、部下は信頼を返してくれる。
・「代えのきかない人物」を作ってはならない。何かあったときにいつでも交代できる人員を用意しておくべきだ。また自分自身も去り際を心得なければならない。
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