レビュー

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えている──。冒頭からゲームオーバーの宣告を受けて、ビジネスパーソンならば陰々滅々たる気分になるかもしれない。

実際、現在の低迷する経済状況や混沌たる社会情勢を考えると、そっとため息をつきたくなってもしかたないだろう。だが本書を最後まで読めば、手詰まりに思えた私たちの社会が、「成熟の明るい高原」に向かっていることがわかる。それは人類の偉業達成に愉悦する祝祭の社会だ。
本書は、物質的不足をほぼ解消し「文明化」という宿願を果たした私たちが、これから向かうべき「高原社会」について構想したものである。文明化の終焉を迎えた私たちの未来に経済成長はないと著者は断言する。物質的不足を解消したのだから、経済が停滞するのは必定というわけだ。これを憂いたところで意味はない。需要飽和の時代にあって、「無限の成長」などあり得ない。むしろ問題視すべきなのは、「経済成長しなければ豊かになれない」と思っている私たちの心の貧しさであり、幸福な社会を構想できない想像力のなさである。
発売後、わずか19日で5万部を突破した、いま注目すべき一冊である。著者は高度成長という過去の栄光が忘れられず、ノスタルジーに浸っている私たちの目を覚さんとする。だが彼が予測する未来は、目を背けたくなる陰鬱な社会などでは決してない。
むしろ喜悦に満ちた、本当の意味で生きるに値する社会である。コロナショックによって急ブレーキがかかったいま、この社会のあり方を問い直してみてはいかがだろうか。

本書の要点

・私たちの社会は、「物質的不足の解消」というビジネスの使命をほぼ達成し、文明化の先の「高原社会」へ向かっている。
・市場原理には経済合理性が働くため、問題の難易度と問題の普遍性が限界曲線の内側にある社会課題しか解決できない。外側にある問題の解決には、「人間性に根ざした衝動」が必要だ。
・経済成長のない高原社会では、「消費」はより「応援」に近いものになっていく。
・高原社会には、ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入が必要だ。経済的懸念が払拭されれば、私たちの幸せに貢献しない仕事は淘汰されていく。



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