レビュー

「個」の時代と言われて久しい。だが、「個と言われても自分に特別な個性はないし……」という人も多いのではないか。

要約者もそのひとりだ。他人の目を引く個性はないと自覚しており、特別にやりたいこともない。本書は、そんな「個」の時代にどう生きていくべきか迷っていた要約者に、ヒントを与えてくれた。
著者である井上大輔氏は本書で、「マーケターとして生きる」ことを提案している。「マーケターとして生きる」とは、自分を表現するよりも「相手からスタートする」マーケター視点を持って生きることだ。相手が何を求めているかに思いをめぐらせ、それに応えるためにできうる限りのことをすればいい。そうして相手の期待に応え続けることで、強く求められる存在になれる。周りの人から求められる存在になることは、ひいては際立った「個」を確立することにつながる。
本書では、これまでユニリーバ、アウディ、ヤフーでマネージャーを歴任し、現在はソフトバンクの広告部門でマーケターを務める著者が、マーケター視点を持つための方法を指南してくれる。具体例や図が豊富に含まれており、マーケティングに親しみのない読者にとっても理解しやすいつくりになっている。
本書はマーケティングのコンセプトをキャリア・人生戦略に持ち込んだ点で異色だ。従来のキャリア本は基本的に「自分スタート」な本が多いだけに、それらとはまた違った視点でキャリアを考えられる良さがある。
「個」の時代の振る舞いに悩んでいる人に一読をおすすめしたい。

本書の要点

・マーケティングの思想は、人生に応用できる。
・仕事で思うような結果を出せていなかった著者は、マーケター思考を習得して以降、成果を上げられるようになった。またマーケター思考を仕事以外にも応用することで、人生が変わったと実感している。
・マーケティングは、(1)市場を定義する、(2)価値を定義する、(3)価値をつくりだす、(4)価値を伝える、の4ステップに分かれる。この4ステップを習得し、自分の人生に役立てよう。



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