レビュー

私たちは権力を「個人が自由に使える資産」であり「自分を強くするための資源」だと考えるようになった。その結果、権力の獲得がいつのまにか自己目的化してしまった。

そう著者は指摘する。
しかし、多くの動物の集団では、尊敬や賞賛、大きな権力を得るのは、力や強みを自分のために使う者ではなく、集団の問題を解決するために使った者である。これは人間の集団でもまったく同じことが言えるのだ。
本書は、世界でも有数のビジネスエリートが集まるスタンフォード大学MBAの人気コース「パワフルに行動する方法(Acting with Power)」から生まれた。権力について正しく理解し、正しく使うためのレッスンだ。そこでは、永続する真の権力は、個人的な地位の追求や権力への執着で得られるのではないと教えられている。
要約者にとって印象的だったのは、次のような著者の言葉だ。「権力を持った人間がしてはいけないことなら、誰でも知っている。しかし、権力を持った人間がすべきことについて、明確に答えた者はいない」。本書はこの問いに答えるために、権力を再定義しながら、権力を上手に使うための個々人の「役割」という視点を導入する。
一見、一部のビジネスエリートのために書かれたように感じられるかもしれない。しかし、私たち誰もが社会生活を営んでいる以上、「権力」と「役割」という視点で自分の行動を振り返ることは、人間関係や組織マネジメントに極めてポジティブな効果をもたらすだろう。

本書の要点

・権力には二つの顔がある。自分の権力を前面に押し出す「パワーアップ」と、自分の権力を慎み深く控える「パワーダウン」である。
・権力を適切に使うためには、それぞれのシチュエーションにおけるプロット(筋書き)を把握し、個々の役割に応じて適切にパワーアップ&ダウンを使いこなすことが大切だ。
・リーダーは、権力を好き勝手に使ってよい資源としてではなく、他者のために投資する資源として扱う「与益原則」に沿って行動すべきだ。これからのリーダーに求められるのは、人間としてのあたたかさである。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ