レビュー
学校でどのような師と巡り合うかによって、その後の人生が大きく変わる。学生時代を振り返ると、先生の言葉や人柄、エピソードが深く心に刻み込まれているのではないだろうか。
本書は、森信三氏による、教員をめざす学生向けの「修身」の講義をまとめたものである。森氏は天王寺師範学校(現・大阪教育大学)の講師であり、「国民教育の師父」として今も尊敬されている人物だ。講義といっても知識を体系的に教えるものではない。人生や勉学に関する著者の考えを、様々な事例を出しながら語ったものだ。学術的な表現を使わずに、自らの実感や実体験に基づいた話は非常に理解しやすく興味を引く。教科書的な知識を学ぶ授業よりも、よほど強く生徒たちの心に残ったことだろう。
約80年前になされた講義ではあるが、人間としての修養や志を成し遂げるための心得、学問の本義など、その本質は時を経てもほぼ変わらない。古代のギリシアや中国の哲学者・思想家の言葉が現代の私たちにも響くように、人間にとって大切なことは、古今東西共通した部分がある。
著者の授業を聴講しているような気持ちで本書を読み進めてみてほしい。大いに励まされ、新たな視座を得られることだろう。
本書の要点
・人間の偉さは志によって決まる。
・望みが実現しなくても、必ず別の形で償いが与えられるものだ。それに気づき、不幸を踏み台にして新たな世界を切り開くことが人生の妙味である。
・「地位」や「学歴」で自分を縛ってはいけない。努力を続け、生涯の師と呼べる人に学び、道を見出すことで、真の学問を始められる。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。