レビュー

人的資本経営への注目が一気に高まっている。2022年8月には、内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表した。

2023年には大手企業に対し、人的資本の情報開示が義務づけられる見込みだ。欧米ではすでに人的資本の情報開示が始まっており、重要な企業情報の1つとなっている。一方、日本では、人的資本経営の重要性はわかっていても、その情報をどう開示したらいいのか悩む経営者・人事担当者が多いという。そもそもなぜ開示が必要なのだろうか。
本書を読めば、戦略的な開示が企業価値向上につながる重要な手段であると実感できる。まず自社の人的資本経営における強みや弱みを把握し、理想の姿を描く。そのうえで、現状を開示することにより建設的なフィードバックを得やすくなる。それを踏まえて改善を積み上げた結果、人的資本経営がレベルアップし、投資家など多方面のステークホルダーから高い評価を得られるようになるのだ。
本書には、そんな戦略的開示のノウハウが詰まっている。人的資本開示の世界的潮流、人的資本経営の実現に向けたHRテクノロジーの活用、会計学からのアプローチ、分析の方法論など、実践的な内容ばかりだ。経営者や人事部門、サステナブル経営推進部門、IR部門にとっては、必読の内容といえる。
著者らは2024年には日本が人的資本開示の先頭を走る欧州市場に追いつくと予想している。
人的資本開示の本質とプロセスを体系的につかむうえでも、本書をおすすめしたい。

本書の要点

・人的資本開示の背景には、無形資産に対する金融市場の認識の変化、人事領域へのクラウドテクノロジーの流入、働き手の価値観の変化という3つのメガトレンドがある。
・戦略的開示では、企業価値の向上を目的とし、開示はその手段だととらえる。
・人的資本開示を実践するうえで、著者らは3つを提言している。それは、経営者・人事によるナラティブな説明、データサイエンスを用いた「攻め」の人事機能、人材版中期計画の策定である。



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