レビュー

企業経営を志す者の中で、著者・稲盛和夫の名前を知らない人はまずいないだろう。京セラと第二電電(現KDDI)を創業し、経営不振に陥った日本航空(JAL)をV字回復させ、日本経済の発展に大きく貢献した偉人だ。

アメーバ経営は著者が長年にわたり築き上げた独自の経営管理手法で、高収益事業の根幹を成す概念である。
その本質は、組織を小集団に分けて市場に直結した独立採算制により運営し、経営者意識を持ったリーダーを社内に育成することにある。それと同時に、全従業員が経営に携わる「全員参加経営」を実現する。本書ではそのポイントを著者の経営論とともに、詳細に解説してくれる。企業体質の強化手法を端的に学べる一冊だ。
グローバルな市場競争は厳しさを増す一方、日本経済は依然としてさえない状況が続く。日本経済がその輝きを取り戻すには、全社一丸となった経営ができる企業が増えることが必要だ。本書は現代の日本企業に向け、力強いエールを送ってくれる。
2022年8月、著者は惜しまれながら逝去した。中国メディアも速報し、政府が定例会見で哀悼の意を表明したほどだ。海を越え、今もなお多大な影響を与え続ける稲盛翁の作り上げた経営哲学。その真髄をいまあらためて学び直すことの意義は決して小さくない。

本書の要点

・京セラを創業した著者は、企業内の各組織をガラス張りにする「アメーバ経営」を経営管理の根幹に置く。アメーバ経営とは、「市場に直結した部門別採算制度の確立」「経営者意識を持つ人材の育成」「全員参加経営の実現」の3つを目的とした経営手法である。
・アメーバ経営では、自らの付加価値をシンプルに把握できる「時間当り」の管理会計手法によって、従業員ひとりひとりの生産性を底上げする。
・京セラは「人間として何が正しいのか」を問う哲学をベースにリーダーを育成することで、経営者意識を高め、全員参加経営の実現につながった。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ