レビュー

テクノロジーの発展や労働環境の急速な変化により、ビジネスパーソンにとって生き残りは切実な問題になった。替えのきかない人材になるために、「専門性」を身につけようと、意欲的なビジネスパーソンだったら、専門書を読んだり、セミナーに参加したりしているかもしれない。

だが、こうして身につけられる知識は、本書が意味するところの「専門性」ではない。何故なら、単に知識をインプットするだけでは、自分が「替えのきかない人材」であると証明できないからだ。
本書の画期的な点は、アカデミックな視点を導入することで、「専門性」という概念のアップデートを試みていることだ。オンリーワンの人材になるにはオリジナリティが必要だ。このオリジナリティは付け焼刃ではいけない。そこで鍵となるのが「研究」だ。研究とは大学で行われている知の創造である。優れた研究者は、まだ明らかにされていない事象に目を向け、優れた問いを立てて試行錯誤を重ねる。先行研究に目を通し、そして客観的な視点からものごとを明らかにする。それは、ただ専門知識を覚えて再生することとは、明らかに次元の違う知的活動である。
ビジネスと科学的手法の接続を真摯に試みる姿勢は、ビジネスとアカデミックの分野を行き来しながら専門性を軸に活動をしてきた著者ならではのものだろう。専門性は一朝一夕で習得できるようなものではない。
だが、簡単に習得できないからこそ価値がある。「替えのきかない人材」に興味がある人は、ぜひとも本書を手に取って目から鱗を落としてほしい。

本書の要点

・変化が目まぐるしい現代、ビジネスパーソンはビジネスのプロであることが求められている。本書では、希少性のある知識をアウトプットできるようになることを専門性と定義する。
・専門性を身につける1つめのステップは、自分らしい問いを立てることだ。狭く自分らしい、小さな問いを立てることが重要になる。
・2つめのステップは、オリジナリティを発見することだ。自分の立てた問いに、誰かがすでに答えを出していないかをたしかめなくてはならない。
・最後のステップは多様な意見を尊重することだ。知の創造の根底には、多様な知の統合がある。



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