レビュー

本書の冒頭はこんなエピソードから始まる。
昭和40年~59年にかけて南極観測船として運用された「ふじ」。

そこに乗り組んだ夫にあてて、日本にいる妻から打たれた電報はたった3文字。「ア ナ タ」であった――
どんな長い文章よりも多くを語るこのメッセージを読むと、文章は技術ではないということを思い知らされる。ちなみにこのメッセージは、酒で失敗した夫をたしなめるつもりで妻が打ったものだという裏話があるのだが、それを知ってもなおこの3文字にはさまざまな思いが込められているように思えてならない。
本書の著者は、200万部を超えた不朽の名著『思考の整理学』をはじめ、数多くのベストセラーを送り出してきた外山滋比古だ。96歳まで書き続けた著者は、ことばの表現は心であって、技巧ではないと語る。書く人に切実な思いがあってこそ、人の心を打つ文章が生まれる。本書は、そんな著者が「読まずにはいられない文章」を書くための極意を指南した一冊だ。文章を書くための心構えから始まり、読まれる文章のコツ、心をつかむ構成についての考えを書きつらね、よりよい文章を書きたいと願う人の歩むべき道を明るく照らしてくれる。自分には文章術など関係ないと思っている人でも、本書を読み終わったら文章の力の絶大さに心を惹かれてしまうはずだ。現代を生きる人に広く本書をおすすめしたい。

本書の要点

・どんなに栄養があっても、まずい料理はいい料理ではない。同じように、内容がりっぱでも読みたくないと思われる文章はいい文章ではない。

気がついたら読み終わってしまうような文章が名文といえる。
・読まれる文章を書くには、センテンスは短く、「が」でセンテンス同士をつながない、つなぎは入れない、という3点を心がけるべきだ。
・おもしろく伝えるには、因果関係を追って述べるのではなく、一番言いたいところ、まん中から話を始めるとよい。



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