レビュー

我々は「価値」のない時代を生きている。絶対的な目的や真理といったものはなく、我々は常にその時代その時代で目指すべき道を選ばなくてはならない。

現代において、最も力のある正義の一つは経済発展だろう。資源を消費し、新たな価値を生み出し続け、そして資本を社会に蓄積させていく。そして科学はこうした無限の発展に寄与し、新たな技術を生み出すべく資金がつぎ込まれてきた。これまで、この方向性に疑問を持つ人は限りなく少なかったといえる。ニュースではGDPという指標が当たり前のように大きく取り上げられている。
では、果たしてその方向性は本当に正しいのか。これが本書の投げかける疑問である。昨今、持続可能性という言葉がよく取り上げられる。立ち止まって考えてみれば、GDP追求の結果、環境資源を減らしてしまうと、我々は経済発展と引き換えに何か大きなものを失ってしまうかもしれない。ならば、資本主義と科学はどのような展望を描けばいいのか。本書はダイナミックな視点を持ちながら、資本主義とは科学とは何かという堅実な議論から未来への展望を描いていく。
本書をめくれば、人類の頭上を飛び立つ大鷲のようにこの社会を俯瞰し、草花の合間を縫う蜂のように繊細なものを見つめる、大小さまざまな視点を得ることができるだろう。

本書の要点

・私たちの生きる時代は「スーパー資本主義」「スーパー情報化」と、「ポスト資本主義」「ポスト情報化」という2つのベクトルがせめぎ合っている。
・科学と資本主義は両輪のように相互的に作用しながら発展してきた。そうした時代の変遷を理解し、現在の「情報化」「資本主義」の先を見据える視野の広い展望が、今の日本には必要なのではないだろうか。
・資本主義の議論は活発だが、論者が資本主義のことを十分理解しているとは言い難い。時折資本主義と市場経済は同質のように語られるが、これは大きな誤解である。



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