レビュー
この多様性の時代に、「あくまでも一般的な傾向」である心理学の知見が役に立つのか。そんな疑いを抱く人こそ本書を開いてほしい。
人が人と関わるときにどう感じ、どう行動するかを調べる「対人心理学」。一般には社会心理学と呼ばれ、著者はその専門家でありつつもビジネスなどへの応用に力を入れている。本書でもSNSから仕事、恋愛、子育てなど、幅広いシーンで活用できる知見や実践的な対人テクニックを取り上げる。
たとえば、夫婦の家事分担に関するトピック。ある調査によると、夫婦のどちらもが「自分ばかりがやっている」と感じているのだという。要約者も「自分に負担が偏っている」と思っていたため、この指摘にハッとした。本書にはこのように思い込みを手放し、対人関係を前向きに捉え直すためのヒントが散りばめられている。
最大の魅力はやはり、100トピック全てが海外の心理学研究に裏付けられている点だろう。興味深い研究を世界中から集め、類書も多く刊行する著者の原動力は、複雑でドロドロとした人間の心への関心や愛に基づくものではないだろうか。時に理論に囚われず発せられる鋭い警句や人間臭いユーモアは、隠れた読みどころにもなっている。
本書をぜひ身近な人間関係に役立てていただきたい。
本書の要点
・「対人心理学」は、人が人といるときの行動や感じ方の傾向を調べる学問だ。本書では、海外から集めた研究とそれらに裏付けられた心理学的知見を、100個紹介している。
・客観的に魅力的だと評価された人より、自分のことを魅力的だと思う人のほうが幸福を感じやすい。
・いじめがなくならないのは、集団の結束に役立つからだ。いじめられる人は集団の「いけにえ」であるため、すぐさま逃げたほうがいい。
・従業員の幸福が生産性に直結することは、科学的に裏付けられている。
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