レビュー

今、働きかたのデザインが一気に難しくなっている。その背景には次の2つの事象がある。

人生における選択の回数が増えていること。そして、若者の期待や能力に対し、仕事の質的な負荷や成長機会が乏しい「ゆるい職場」が広まっていることだ。
本書は、主に若手社員に向けて、新しい働きかたを設計するうえでの指針を示した一冊である。著者の古屋星斗氏は、社会人2000人以上を対象とした調査をもとに、若手社会人が抱える不安や焦りの原因とともに、「新しい安定」を実現するための具体的な道筋を描き出す。
注目すべきキーワードは、「寄り道」と「近道」だ。「寄り道」とは、計画外の機会を取り入れることであり、「近道」とは、ある専門性を得るために必要なスキルや経験を効率よく積み上げる工夫を指す。これらのアプローチを組み合わせることで、豊かなキャリアが実現できるという。その方法論は実に前向きで、「私にもできる」と背中を押してくれるものである。
これまでの常識にとらわれず、それでいて人類が積み上げてきたキャリアの理論や知見も活かそう――。そんな著者のエールが本書に込められていると要約者は感じた。前著『ゆるい職場』や『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』を読んだ方も、新たな視点でキャリアや人材育成のテーマと向き合えるのではないだろうか。
本書は、自分らしさと成長を両立したい方にうってつけの「新しいキャリアデザイン」の教科書といえる。

本書の要点

・ゆるい職場によって、時間の余白と心の余白の食い違いが生まれた。会社は若手を十分に育ててくれないのが現状だ。
・若者のキャリア観は、「ありのまま」でいたい価値観と、「なにものか」になりたい価値観のグラデーションを特徴とする。
・キャリアデザインにおける最大の課題は、どこでどうやって最低必要量に達するべく努力を投資するかである。その際、寄り道と近道を活用したスモールステップや、キャリア・キャンペーンがカギとなる。



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