レビュー

「今月も未達成でした。力及ばず申し訳ございません」「どうして先方の予算を聞いてこないんだ! いつも口酸っぱく言っているじゃないか」「Aさんは目標設定が甘いから、いつも達成するよね。

こっちは高い目標を課せられているのに不公平」――どれも一般的な会社でよく聞かれる言葉だろう。だがキーエンスでは、こうしたことが起こらない。その理由は、キーエンスが常に高収益を上げられる理由と直結している。
キーエンス出身の著者、高杉康成氏は本書の冒頭で、キーエンスと他社の最大の違いは「性弱説」にあると指摘する。性弱説とは、人は本来弱い生き物であり、目先の簡単な方法を選んでしまうという捉え方だ。一方、一般的な企業は「性善説」で動いており、人はみな本来善人であって、正しく指示すれば何でもできると考える。
キーエンスでは、難しい仕事を任せるとき、「できないかもしれない」という性弱説視点で考え、その仕事がうまくいく仕組みを用意する。たとえば「どうして先方の予算を聞いてこないんだ! いつも口酸っぱく言っているじゃないか」が起こらないのは、「何度伝えても、部下は先方の予算を聞いてこないかもしれない」と考え、商談の「前」にロールプレイングをし、商談内容を指導しているからだ。
本書は、セールスに限らず、あらゆる職種で使える普遍的な考え方と再現性あるノウハウを教えてくれる。仕事を円滑に進め、チームとして成果を出したいすべてのビジネスパーソン必読の一冊だ。

本書の要点

・キーエンスで大きな成果が出るのは、仕事に対するアプローチが性弱説的だからだ。難しい仕事を任せるとき、「できるだろう」と楽観視するのではなく、「できないかもしれない」という性弱説視点で「任せた仕事をできる確率を高めるにはどうすればいいか」を考える。


・キーエンスでは様々な仕事に対して、性弱説的な見方で仕組みをつくり込んだ上で、それらを形骸化させない仕組みも用意している。



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