レビュー

画期的な新規事業の起業で大成功を収めたエピソードや、大企業の巨大プロジェクトを成功させた敏腕経営者のエピソードなど、経営の成功譚は世間に溢れている。サクセス・ストーリーに触れれば、自分も成功できるはずだと勇気づけられるし、前向きな気持ちになって楽しむこともできる。


しかし、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という有名な言葉がある。上手くいったことには再現性が無く真似するのが難しい場合もある一方で、失敗したことには必然性があり、その原因を教訓にして改善していける。だから、成功を目指すために学ぶべきなのは、成功譚よりも失敗のエピソードであるはずだ。
本書には、帝国データバンクが情報を収集して分析した、2021年6月から2024年9月までの、新興企業から老舗、中小企業から大企業の倒産事例に加え、2024年10月の船井電機の倒産まで、様々な企業のエピソードが紹介されている。倒産と一口に言ってもそれぞれの事情は企業ごとに異なるため、多様な失敗例を見出すことができるだろう。一方で、粉飾決算や資金の私的流用による信用失墜、身の丈に合わない事業規模の拡大など、共通した要因も見受けられる。
本書を読むことで、経営に関わる人も、そうではない人も、これらの失敗事例から自分なりに学び、活かすための教訓を得られることだろう。

本書の要点

・コロナ禍における支援策によって、本来破綻していたはずの企業も延命できていたが、支援終了とともに物価、人件費が高騰したことも相まって資金繰りに行き詰まる企業が増えたため、倒産件数が増加した。
・アフターコロナの倒産は、リーマン・ショック時のような「不況型」ではなく、資金面や人材確保の面で企業間格差が広がったことが原因となっている。
・「ユニコーン」候補とされた企業や創業100年を超える老舗企業、大企業の事業を引き継いだ企業まで、経営環境の変化だけでなく、それぞれの個別の事情で倒産に至っており、一つひとつの事例を転ばぬ先の杖として学ぶことが大切だ。



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