レビュー

「認知症にだけはなりたくない」
認知症について語るときに、こんなふうに言われることは少なくない。人生100年時代には、誰もが認知症の当事者やその家族になる可能性がある。

しかし、自分は認知症と無縁でいたいというのが多くの人の本音だろう。認知症になるとすべて忘れてしまう、自分が自分でなくなってしまうというイメージがその背景にあるのは間違いない。
多くの人が抱くこのような認知症観に対して、本書の著者である認知症専門医の内田直樹氏は認知症のリアルとは大きくズレていると指摘する。メディアで扱われる認知症は、アルツハイマー型認知症の重症例に偏っている。実際の認知症には多様な症状があり、適切な治療を受けながら、その人らしい生活を続けている人もいる。ところが、認知症に対する偏見や誤解があるために、過大な心配をしている人は少なくない。それを著者は「早合点認知症」と呼ぶことにした。
本書を読むと、認知症を過度に恐れる必要はないのだということがよくわかる。認知症になったからといって、いきなり急激な変化が訪れるわけではなく、治療可能な認知症もある。むしろ気をつけるべきなのは、認知症に対する知識不足のために、無意味な予防を試みたり、治療可能な認知症を見逃して不適切な対応をしたりすることだ。誰もが無縁ではいられないからこそ、認知症の現実を知り、本当に効果のある予防や備えに本書を役立ててもらいたい。

本書の要点

・多くの人は、アルツハイマー型認知症の重症例を認知症全体のイメージとして捉えてしまっている。

実際の認知症は多様なものであり、治療可能なものも含まれている。
・認知症の診断で重要なのは、治療可能な認知症の可能性を早期に見極め、適切に対処することだ。
・真の自立とは、膨大なものに頼りながら、何にも依存していないと感じていられる状態だ。「私は認知症になっても自立した生活を続けられる」と感じていられる社会の実現が求められる。



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