レビュー
今年こそ山に登ってみよう――。そう思ってから何年も経ってしまった。
登山には憧れがあるが、初心者にはなかなか一歩を踏み出しにくい。重い荷物を背負って急な山道を登れるのか、道に迷ったらどうしよう……と不安が頭をよぎり、結局今年も見送ってしまう。
そんな登山ビギナーにとって、本書は心強い一冊である。著者の佐々木俊尚氏はジャーナリストとして活躍する一方で、大学時代から登山を続ける登山愛好家としての顔ももつ。そんな著者が提案するのが「フラット登山」だ。一見矛盾するような言葉だが、その本質は「気持ち良く歩くこと」を第一にした、新しい登山スタイルである。
登山といえば、山頂からの絶景や達成感、次なる高みへの挑戦といったイメージがつきまとう。だが著者は、「もっと気軽に、歩くこと自体を楽しんでいいのではないか」と提案する。
本書では「フラット登山」の考え方をはじめ、装備や計画の立て方、初心者でも安心なコース選びまで丁寧に解説している。後半には、著者が勧める30の「フラット登山コース」が紹介されるが、その中には海岸や平地のコースも含まれる。「気持ち良く歩ければ山でなくてもいい」という柔軟さも、フラット登山の魅力でもある。
本書を読めば、歩きたい気持ちが湧いてくるはずだ。最近、疲れていると感じるなら、“ふらっと”自然の中を歩いてみるといい。自分のペースで気持ち良く歩いているうちに、心身がほぐれていくだろう。
本書の要点
・本書では、新しい登山のスタイル「フラット登山」を提唱している。フラット登山とは「ロングトレイルほど求道的ではなく、山頂を目指す登山でもなく、かといって散歩ほど短い歩行でもない。都会の散歩よりも深く濃い自然に浸り、つらくならない程度に、ただ歩く喜びを満たす旅」を指す。
・フラット登山のコース指標は「官能的な山道」であり、「異世界に迷い込んでいる」「広大で開放感がある」「変化に富み、足に快感がある」「冒険心が満たされる」「霊性に畏怖を感じる」の5つの要素で評価する。
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