レビュー
2022年、ロシアはウクライナへの本格的な侵攻を開始し、2025年現在もまだ戦争は続いている。本書の著者である小泉悠氏は、こうした状況下でロシア軍事の専門家として注目を浴びることになった人物だ。
果たしてロシア軍事の専門家から、ビジネスパーソンがなにを学ぶのだろうと疑問に思う人もいるだろう。ロシア軍事の専門家というと、特殊な情報を手に入れるなんらかのルートを持っており、それを一般大衆に開示している――というイメージを持つ人も多いかもしれない。しかし本書で語られる軍事研究家像は、そのようなイメージとはまったく異なっている。集めているのはアクセスしようと思えば誰にでもできる公開情報が中心であり、腕の見せどころはむしろ、そうして得た情報を求めている相手に合わせてどのように加工し整理するかにある。
氾濫する情報を集めて精査し、自ら問いを立て、それに基づいて情報を整理し、意味のあるものに加工していくことを、著者は料理に喩える。生のままでは価値のない素材を、加工して意味のあるものにする。ここまで語れば、これがビジネスにも極めて有用な普遍的メソッドであることはすぐに理解できるだろう。安全保障におけるのと同じくらい、ビジネスにおいても情報分析は必須のスキルなのである。
本書の要点
・インターネットの普及によって生の情報は手に入りやすくなったが、溢れる生の情報を分析する方法はなかなか手に入らない。
・単なる情報(インフォメーション)は、加工されてはじめて情報資料(インテリジェンス)になる。特別な情報を得ることそのものよりも、情報をどのように分析し加工するかが重要である。
・よい情報分析を行うためには、とにかく書いてみることが重要だ。書いていくうちに情報は整理され、本当に集めるべき情報もわかってくる。
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