レビュー
朝すっきり起きられない。なんとなく体が重い。
著者の有田秀穂氏は、東邦大学医学部名誉教授であり、脳生理学・精神生理学を専門とする医師・脳生理学者だ。セロトニン研究の第一人者としても知られ、心身の健康にかかわる神経伝達物質の研究を長年にわたり続けてきた人物である。
本書では、「脳疲労」に着目し、なぜ休んでも疲れが取れないのか、なぜ眠れないのかといった現代人の悩みの正体と解決策を、脳科学の視点から見ていく。キーワードは「セロトニン」「オキシトシン」「メラトニン」だ。どれも難しそうに聞こえるが、丁寧な説明と具体例のおかげで、専門知識がなくとも理解しやすい。
中でも印象的なのは、デジタル機器に依存した生活が、睡眠の質や感情のコントロールにまで悪影響を及ぼすという指摘だ。日中はデジタルを活用しつつ、夜はアナログな過ごし方に切り替える「ハイブリッド生活」をしようという提案には、納得感がある。
慢性的な疲れは単なる休養不足・モチベーション不足ではなく、脳のシステムそのものの問題である――。この事実を知るだけでも、無理に自分を責めず、適切にセルフケアを行おうという意識が芽生えてくるだろう。つい頑張りすぎてしまう人、デジタルデバイスに依存している自覚がある人、ストレスが溜まるとSNSやゲームで解消しようとしがちな人に読んでほしい。
本書の要点
・慢性疲労の改善においては、セロトニンが鍵となる。セロトニンの分泌を促すためには、太陽光を浴びることと体を動かすことが有効だ。
・ストレス解消にはオキシトシンが役立つ。オキシトシンの分泌を増やしたいなら、誰かと心地よくおしゃべりする時間をつくろう。
・快眠を導くホルモンはメラトニンだ。メラトニンを分泌させるために、「黄昏時から入眠まではアナログ生活を」を合言葉として、日中は適度に体を動かし、夜はオフラインで過ごそう。
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