レビュー
本書は「庭の話」というタイトルだが、実際は庭の話ではない。
いや、タイトルに偽りがあると言いたいわけではない。
しかし「庭」というのはあくまで比喩にすぎないこともまた事実だ。真に本書が語っているのは、情報社会論である。我々はSNSというプラットフォームによって、人間同士が相互に評価をつけあうゲームの中に閉じ込められている。それはたとえばトランプを当選させたり、イギリスをEUから離脱させるようなかたちで、実際に世界を大きく動かしている。一方、それを批判する立場は家族やコモンズといった共同体に回帰しがちであるが、結局それも人間同士の相互評価ゲームからは逃れられていない。どちらの選択肢も窮屈で不毛だとしたら、どうやったら人間を脱出させられるのか――というのが本書の問いだ。
ゆえにこれは、ただの庭の話ではない。疲弊しながらSNSに投稿し続ける我々の話であり、それによって揺るがされているこの世界の話であり、すべての人間が豊かに生きていくことができる未来の話でもある。「庭」という言葉に興味を持ったことはないかもしれなくとも、この世界に存在する巨大なプラットフォームの上に生きている以上、我々は「庭」を必要としているのだ。
本書の要点
・現在、人間はSNSをはじめとしたプラットフォームにおける相互評価ゲームに没頭しており、それがさまざまな問題を引き起こしている。
・こうした問題を解決するために共同体回帰が説かれがちであるが、それは相互評価ゲームと同じ原理に駆動されている。
・その問題を解決するためのヒントになるのが、「庭」のアプローチである。
・「庭」とは人工物と自然物の中間に存在し、人間と人間ではなく、人間と事物のコミュニケーションを促進する場である。
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