レビュー

心臓病に魅せられた人たちがいる。これは何も、注目を集めたいがために奇をてらった発言をしているのではない。

誰にとって魅力的なのか——それは作家にとって、だ。
作家に好まれやすい病気、というものを考えたことがあるだろうか。本好きであっても、そうしたことに思いを巡らせるのは稀であるはずだ。しかし、よくよく考えてみると、物語にはよく登場する病気と、そうでない病気があることに気づく。天然痘と心臓病、ドラマや小説でよく目にするのはどちらだろう。なぜそこに格差があるのか? それは作家が(意識的にしろ無意識的にしろ)特定の病気を好ましいと思っているからだ。
本書は、私たちに特別な読解装置を与えてくれる。それはさながら、物語を見たこともない角度から切り取ってみせるナイフのようなものだ。人間は長い歴史のなかで、無数の物語や詩を生み出し、語り継いできた。その蓄積は地層のように重なり、物語にはパターンが育まれている。いわゆる「死亡フラグ」も、この発明のひとつだろう。お決まりの「パターン」は飽きられるどころか、それを育んできた無数の作品の文脈を呼び込む、新たな物語に奥行きを与える役割を果たしている。
宗教、気候、食事、季節等々、ストーリーに散りばめられたこれらの要素に気を配ることで、物語を深く掘り下げて理解することが可能になる。
いつも何気なく楽しんでいる小説や映画、アニメ、演劇――そのすべてが、この一冊によってもっと味わい深くなるはずだ。

本書の要点

・物語にはパターンがある。特に主人公が旅に出たときは目を光らせるときだ。旅には真の目的がある。主人公が何かしらの変化をするための旅だ。それを知らないのは主人公自身だけだ。
・ヒーローの隣に立ってはいけない。ヒーロー自身に降りかかる厄災はヒーローの周辺にも降りかかる。それだけじゃない。ヒーローが成長するために犠牲になるのは、大抵ヒーローの親友だ。
・物語はたったひとつしかない。

神話の頃から、あるいはもっと昔から、人はストーリーを紡いできた。ストーリーはいつも、私たちのすぐ傍にある。



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