レビュー

「DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)」が米国から世界へ広がるきっかけになったのは、2020年5月、ミネソタ州でアフリカ系アメリカ人男性が警察官の不適切な拘束によって命を落とした事件だった。
この事件を受けて「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」運動が全米に広がり、暴動が多発。

企業経営にも大きな影響を与え、それまでのD&I(Diversity=多様性、Inclusion=包摂性)にEquity(公正性)が加わり、「DE&I」に形を変えた。
その後、DE&Iの動きは国境を越えて広がり、日本でもその重要性が認識されるようになってきた。実際、DE&Iの推進に取り組む企業は着実に増えている。
一方で、「なぜ企業がDE&Iに取り組む必要があるのか」と疑問を持つ人もいるだろう。この点について、組織における人材開発を専門とする立教大学・中原淳教授は、DE&Iは「人材確保」と「イノベーション」に直結するものだと指摘している。
人材を確保するには、誰もが働きやすい環境づくりが不可欠であるのは言うまでもない。さらに、多様性を尊重することで新たな発想が生まれやすくなり、イノベーションが促進されるという。つまり、DE&Iは企業の存亡にかかわる重要課題なのである。
本書では、日本におけるDE&I推進の先進事例として、14の企業を紹介する。各社の取り組みを通じて、実践的な知見を得ることができるだろう。企業経営者や人事担当者、管理職層は、本書を参考にDE&I推進の第一歩を踏み出してほしい。

本書の要点

・DE&Iは、企業の成功を左右するキードライバーである。

働きやすい環境を整えることで人材確保につながり、多様性を尊重することでイノベーションが生まれやすくなるからだ。
・JTBはDEIにB(帰属性=心理的安全性)を加えた「DEIB」を推進している。
・相互住宅は働き方改革の取り組みにより、男性の育児休業取得率がほぼ100%になった。
・野村ホールディングスはDEIを重要経営戦略に位置づけ、全役職員の人事評価にひもづけている。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ