レビュー
「ジョブ型」という言葉は、一時の流行語から一般のビジネス用語に移行した。そもそもこの言葉を名付けたのは、厚生労働省のシンクタンク的存在である労働政策研究・研修機構の政策研究所長、濱口桂一郎氏である。
時は下って2020年、日本経済団体連合会(経団連)が「2020年版 経営労働政策特別委員会報告」においてジョブ型を大々的に打ち出したことで、いわば“ジョブ型祭り”が始まった。さらに2024年に閣議決定された岸田文雄政権下の「経済財政運営と改革の基本方針2024」の中で、ジョブ型人事制度の導入促進が謳われ、実際に多くの企業でジョブ型人事制度とそれに付随する職務給が導入され始めている。
本書はそうした流れに一石を投じるもので、昇進・昇格や給与が、これまでの「ヒト=能力」基準から「仕事=ジョブ」基準に変わると、働き方がどう変わるかを、多くの調査や資料を駆使しながら具体的に示している。
本書の特徴は、対象となる社員層を一律に設定せず、管理職、専門職、一般社員というように、大多数の「ふつうの社員」が辿る道を踏まえて、ジョブ型の影響を考察し、キャリア形成のための「道しるべ」を述べている点にある。
「そもそもジョブ型って何だろう」という人や、自分の会社がジョブ型に移行した人はもちろん、移行しそうな人、これからジョブ型の会社に転職することを考えている人は、ぜひ目を通していただきたい。
本書の要点
・企業がジョブ型に関心を持つ理由は2つある。1つは人件費の合理性を求め、仕事と処遇の関係を見直したいこと。もう1つは経営戦略推進のため、各ポジションに最適なタレント(才能)を確保するタレントマネジメント実践のためである。
・管理職層の専門職は、専門分野のハブとなる「プロデュ―サー型」を目指すべきだ。
・一般社員に対するジョブ型の影響は少ないが、30代半ばから40歳前後には専門分野を確立しておきたい。
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